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世界の創造

のあ

[のあ]

キャラID
: TM825-482
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: 踊り子
レベル
: 140

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のあの冒険日誌

2026-08-29 22:13:31.0 2026-08-29 22:14:12.0テーマ:14周年記念(8/31まで)

『永冬の母』下幕

それから、長い冬が続いた。

ある日。

少女は雪原で、
一人の旅人と出会った。

旅人は少女に、
遠い世界の話をした。

海。

鳥。

雨。

そして、

春。

「春?」

「雪が溶ける季節だよ」

少女は笑った。

「雪って、溶けるの?」

旅人も笑った。

「昔はね」

土から緑が芽を出して、

木々には花が咲いて、

暖かな風が吹く。

少女は夢中になって聞いた。

その夜。

少女は大樹の根元で、
ずっと春の話をした。

「ねえ、お母さん」

「わたし、春を見てみたい」

枝が揺れた。

「お母さんと一緒に」

枝は、

もう揺れなかった。

やがて少女は知る。

旅人が、
なぜこの場所を訪れたのかを。

世界から春が消えた理由を探していたのだ。

そして、その答えは、

少女が毎日抱きしめているものだった。

「……お母さんが?」

旅人は何も答えなかった。

答えなくても、

少女には分かった。

大樹の根は、
世界中へ伸びていた。

世界から熱を奪い、

そのすべてを、

自分へ与え続けていた。

少女はその夜、

初めて大樹の根元へ帰らなかった。

雪の上に座って、

遠くから大樹を見つめた。

世界で一番優しいと思っていた母。

けれどその向こうでは、

自分の知らない誰かが、

今も寒さに震えている。

少女には分からなかった。

母を嫌えばいいのか。

自分を責めればいいのか。

ただ、

悲しかった。

夜が深くなったころ。

少女の肩に、

一本の枝が伸びてきた。

いつも雪から守ってくれた枝だった。

少女は、

その枝を振り払った。

大樹が震えた。

それは、

少女が初めて母を拒んだ夜だった。

しばらくして。

少女は立ち上がった。

そして、

いつもの場所へ戻った。

大樹の前に立つ。

長い間、

何も言えなかった。

やがて少女は、

そっと幹に触れた。

「……それでも」

声が震えた。

「それでも、お母さんだよ」

枝が揺れた。

「わたしを助けてくれたんだよね」

大樹は答えない。

「わたしがいなくなるのが、嫌だったんだよね」

返事はない。

けれど少女には、

もう分かっていた。

少女は幹を抱きしめた。

「わたしも、お母さんがいなくなるのは嫌だよ」

だからこそ。

「一緒に、春を見たかったな」

その言葉を最後に、

少女は泣いた。

大樹は初めて知った。

少女が自分を愛していたのは、

実を与えるからではなかった。

暖めるからでもない。

守るからでもない。

ただ、

自分だったから。

ならば。

自分もまた、

少女が傍にいるから愛するのではなく。

少女が愛するものを、

愛してみようと思った。

翌朝。

少女が目を覚ますと、

雪が降っていなかった。

「……お母さん?」

大樹の根が、

ゆっくりと大地からほどけていく。

世界中へ伸びていた根から、

奪った熱が返っていく。

「待って」

雪が溶ける。

「お母さん」

川が流れ始める。

「やだ」

眠っていた命が、

目を覚ましていく。

少女は大樹を抱きしめた。

「春なんて見なくていい」

葉が落ちる。

「ずっと冬でいいから」

また一枚。

「だから……」

最後の葉が、

少女の手のひらへ落ちた。

「行かないで」

返事はなかった。

やがて。

雪の下から、

小さなものが顔を出した。

少女は涙を拭いて、

それを見る。

旅人から聞いたものと同じだった。

花。

世界で最初の、

春の花。

少女はそれを摘まずに、

枯れた大樹の根元へ座った。

「……お母さん」

返事はない。

「春ってね」

少女は花を見つめた。

「暖かいんだね」

風が吹いた。

枯れた枝が、

ほんの少しだけ揺れた。

昔なら、

それは風だった。

けれど少女は、

笑った。

世界には、

春が戻った。

人々はそれを、

奇跡と呼んだ。

けれど少女だけは、

その春を別の名前で呼んだ。

母が最後に残してくれたもの。

自分を守るためではなく、

自分が歩いていく世界を守るために、

初めて手を離してくれたもの。

少女は大樹の根元に咲いた花へ、

そっと触れた。

「ありがとう」

そして、

いつものように笑った。

「お母さん」
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