プク瀬船はアストルティアのプク瀬川を上下する小舟である。
アストルティアの罪人が遠島を申し渡されるとプク瀬舟でプクレッドへ回されることであった。
しかし今夜はこれまで類のない、珍しい罪人がプク瀬舟に乗せられた。
それは名をプク助と言って三十歳ばかりになる、住所不定の男である。
護送を命ぜられて、一緒に舟に乗り込んだ同心モーベイはただプク助が弟◯しの罪人だということだけを聞いていた。

プク助は月を仰ぎ見ていた。その顔は晴れやかで目に輝きがある。
モーベイ「プク助。お前何を思っているのか?」
プク助「は、はい?」

モーベイ「おれはこれまで大勢の人を島へ送ってきた。それはずいぶんいろんな身の上の人だったが、だれも島へ行くのを悲しがり、見送りに来た親類縁者と夜通し泣くに決まっていた。」
モーベイ「なのにおまえは、どうも島へ行くのを苦にしておらぬようだ。一体お前はどう思っているのだ?」

プク助「なるほど、島へ行くということは他の人には悲しいことでごさいましょう。」
プク助「しかしそれは世間でラクをしていた人だからでございます。」
プク助「私はこれまで自分の居場所というものがございませんでした。ですがこたびは女神に島へいろとおっしゃっていただきました。自分の居場所があるということはなによりありがたいことでございます。」
プク助「それから島へおやりくださるにつきまして200Gの鳥目をいただきました。お恥ずかしいことですが、私は今日まで200Gというお足をこうして懐に持っていたことはございませぬ。」
ギュゥゥゥ
プク助「いつも仕事を探し骨を惜しまず働きましたが稼いだ銭は右から左へ出ていくばかり。私はこの200Gを島でする仕事の元手にしようと楽しんでおります(*^ω^*)」

モーベイ「うん。そうかい。」
モーベイは七人暮らし。倹約しても生活は苦しい。実家が裕福な妻も悩みの種だった。妻が実家からいろいろ借財してくるのを心苦しく思っていた。
プク助は仕事で給金を貰っても右から左でなくしてしまうと言った。いかにも気の毒だが、自分も扶持米を右から左へ渡すだけ。
プク助より豊かな暮らしをしているはずだが、満足を感じたことはない。いつも足りぬ足りぬと嘆いていた。
おまけに内心では仕事がなくなったらどうしようとか、病気になったらどうしようとか、恐れをぬぐえずにいる。
モーモンの恐れと欲には果てがない。
病があれば、この病がなければと思う。
仕事がなければ、食っていけたらと思う。
貯金がなければ、少しでも蓄えがあればと思う。
貯金があっても、もっと多ければと思う。
日誌にいいねがなければ、いいねがあれば思う。
日誌にいいねがあっても、コメントがあれば思う。
果てがない…
しかしプク助は踏み止まっている。
足ることを知っている。
続く……
わけない。