早朝、午前6時。標的の存在するエリアの上空にヘリが飛んでいた。
「準備はよろしいですか?メファ様。今回の相手はある程度手練れのようですが」
「だから私が制圧するんでしょうが、折角使えそうな人材を見つけたってのに、あなたに殺されちゃったら話にならない」
その中では、ヘリを運転する人物が、そこから飛び降りようとする少女に語りかけていた。そうですか、と抑揚の無い声で返事をする同僚に対して一つ鼻で笑った後、少女はそこから飛び降りた。
同刻、城内ではアとその眷属達がこれから行うべき対策について討論を続けていた。
「だ!か!ら!私はこの国なんてさっさと差し出して、皆で他のとこに逃げるべきだって言ってるの!」
「いや、相手の目的がアーだった場合、その行為は何の意味も成さない。お前の案を採用するよりかは、勝手知ったるこの場所で、連中を迎撃するのが得策だと思う」
会議室と化した食堂内では、ルーとヴーの二人が激しい討論を続けている。それぞれの言い分と、眷属達からの報告を聞きながら、アはこう判断していた。
(確かに、ルーの意見は安全策としては間違ってないんだけど…でも相手の力が分からないうちから逃げるってのはちょっと…ね。それに不浄の地であるここなら、アンデットには有利に、生身の生物には不利に働く。よっぽどの相手じゃなきゃ負けることなんてないはず…ひとまず、相手のことを理解しておくためにも、一当たりはしておきたいかな。)
そこまで考えた彼女は、今や顔を突き合わせるようにしながら話す二人に向かってその意見を伝えようとし…
そこで、突然爆音が響き渡った。
「え!?何!?」「うっそ、早すぎない!?」「糞、何が起きたか確認しに向かう!」
隣にいるアンデットに確認する意味を込めて視線を送るも、返ってきた反応は否定の感情。…どうやら、見回りに出ている彼の分裂体には感知されていないようだ。それを踏まえて、アは頼れる参謀と話し合う。
「てことは…まあまあ高位の上位の情報防護系の魔法か特殊技能を使える相手ってことかしらね」
「そこに付け加えると、恐らく相手は空路で攻めてきてると思うかな。陸路だと流石に城に着くまでに誰かが検知してるし、地中からってのは流石に無いだろうからね。つまり…」
『どこから爆撃されるか分からない以上、ヴーの側を離れるべきではない』
そこまで話して、ひとまずの結論を出した二人は、一二も無く外へと飛び出した。
城からに出てすぐ外には、異様な光景が広がっていた。警邏代わりに城下町に配置していたアンデットは皆無力化され、大きめの建物は全て何か巨大なものに押し潰されたようにして崩壊している。そして、先んじて城の外に出たヴーは、一人の少女…丁度アと同い年くらいの人物と話をしていた。
「おい!来るんじゃないここは危険だ!」
「あ、丁度良い所に。私は…しがない新興国家の侵略部隊の隊長をしているメファと申します。先程そちらの分からず屋さんと話してた所なんですよ、さっさとあなたを出すように、と」
後ろも見ずに警告を発してくるヴーとは正反対の、まるで何でもない日常会話のような態度で語りかけてくる少女だったが、アには、いや恐らくはこの場にいる全ての知性ある存在は気づいていた。
「こいつはとんでもなく強い」と。
そんな彼女達のことなど気にした様子も無く、メファと名乗った人物は話し続ける。
「さて、これからこちらの要求を提示させて頂きますね。あ、言っときますけど拒否権はないですからね。でもって要求ってのは…」
そこでわざとらしく一拍置き、にやりと笑みを浮かべながら一言。
「この国とあなたの身柄、両方譲って頂けませんか?」
「ハアアアアアッッ!!!!」
その言葉を聞くと同時に、ヴーがメファに切りかかった。不意打ちだったにも関わらずあっさりと回避され、続く連撃も大きく飛び退かれ空を切った。あまりの事態の急変に追いついていけないアに向かって、ヴーは叫ぶ。
「おい、こいつは強敵だ、さっさと強化魔法をくれ!それと肉壁用の丈夫な…ゾンビ系の奴を召喚しろ!」「わ、分かった!えーと…、『鎧硬化』『筋力増加』『全属性防護』『死霊召喚6th』…かな?」
臨戦耐性へと入る相手を見て、メファは一層笑みを深くする。
「あはっ…これは…交渉失敗ってことでいいですよね?…それなら」
半ば独り言を話しながら、帯びていた武器…両刃のロングソードを抜刀する。その刀身には、黒々とした炎が纏わりついていた。それを青眼に構えながら少女は一言。
「蹂躙を開始します」