彼女は決まって時間のない朝に急にいなくなる。
気まぐれなのだろうか。
どうしてか、ふとした時にいなくなってしまうのだ。探そうと思ってもなかなか見つからず、数週間日を空けると何事もなかったかのように顔を出す。
思えば、茹だるように暑い日も、凍えるように寒い日も、悲しい日も嬉しい日も、ほとんどの思い出は彼女と共にある。
彼女はいつも私を支えてくれているのだ。
気まぐれな性格がいじらしいとさえ思う。
私はそんな彼女をこき使う立場にある。
文字通り足蹴にしているのだが、彼女はむしろ収まりが良さそうで、ずっと私の下にいてくれるのだ。
昨日も長時間、通勤から退勤まで、ずっと寄り添ってくれた。なかなかどうして、愛いやつだ。
だから彼女がいなくなるとすこし何か喪失感にも似た感情を覚える。
「なんで、靴下の片っぽっていつもどこかへ行っちゃうんだろう」
そうぼやきながら靴下を履き替えて出かける。
また今度ソファの下でも探してみるか。
今日の靴下は穴が空いていた。