◇メインストーリー構造の限界
これは特にVer.6あたりから顕在化した問題だが、DQ10は「敵対勢力から世界を救う」という"ドラクエ的"シナリオプロットに縛られすぎている節がある。
・Ver.1→冥王から世界を救う
・Ver.2→大魔王から世界を救う
・Ver.3→竜神から世界を救う
・Ver.4→滅びの運命から世界を救う
・Ver.5→闇の根源から世界を救う
・Ver.6→ジア・クトから世界を救う
・Ver.7→創失から世界を救う
「7度も世界を救った主人公」の名に恥じず、ドラクエの王道の展開をほぼ7回繰り返しているのだ。唯一Ver.4は個人的に変化球で挑戦的なシナリオ構成だったと思っているが、それでもマンネリ化が進んでいる感は否めない。
また、サービスイン当時は明らかにVer.5までのシナリオを前提に物語を展開していたため、Ver.6以降はストーリー規模のインフレ(闇の根源<ジア・クト)と主人公の目的意識の希薄化(兄弟姉妹との再会後)いう更なる歪みを抱えることになった。
私が思うに、メインストーリーはあくまで"ドラクエ"としてのブランド価値を重視した内容を崩さないようにしていると考えている。なぜなら、1拡張のシナリオ規模が世界レベルからシュリンクしてしまうと、それだけストーリー構成も特殊性が増し、ドラクエ的なイメージから乖離していくからである。私がこう考えているのにも理由があり、同社のMMOであるFF11およびFF14では「世界を救う」ことを必ずしも重要視していないためだ。結果的に世界を救っている例は結構あるが、シナリオ上重視されない。アトルガンの秘宝、アドゥリンの魔境、蒼天のイシュガルド、紅蓮のリベレーター、黄金のレガシーといったストーリーは規模を舞台となる地域に抑え、拡張性と物語展開の独自性を両立した内容になっている(と個人的には思っている)。
さて、ここまでDQ10がメインストーリーを続けていく上で抱えている不満というか問題点を語った。しかし、上記の問題をほぼ回避できる手段がDQ10にも残されている。それがサブストーリーである。
安西先生も触れていたが、あくまで終了するのはメインストーリーであり、サブストーリーはこの限りではない。長編連続クエストや妖精図書館など、地域やテーマを絞ったシナリオはまだまだ追加の余地がある。DQ10はサブクエストの品質が非常に高く、プロット構成を縛られやすいメインストーリーと比べて満足度の高い内容が多いため、メインストーリーを一区切りつけてこれらの中身を充実させる、という方針は合理的な選択と言えるだろう。
また、そもそもの話としてメインストーリーが完結したからといって、今後金輪際メインストーリーが追加されないと断言されたわけではない。これはFF11の「蝕世のエンブリオ」という前例があり、シナリオプロットを長い期間かけて練り直し、第二部として送り出される可能性も残されている。