※メインストーリーとは関係ないロールプレイ日誌です。
丁度2年ほど前のことだ。
僕はグレンの雪深い地区にいた。
もはや調理ギルドの見習いではなくなり、自分の店に少しだけ慣れたころ、
もっと大きなレストランで経験を積むのもいいんじゃないかな、とマスターに紹介されて訪れた。
独立したあとに修行するなんて変な話だったとは思うが、今にして思うとスタートアップの助っ人の意味合いが強かったのかもしれない。
どちらにしろ、僕は対人関係に難があり、とてもじゃないが仕事ができるとは言えなかった。
そんな人材をあてがわれるって事は、よっぽど人手が足りていないか、先方もよっぽどの変わり者かのどちらかだろうと思ったものだ。
募集要項に書かれた時間に指定の住所になんとか着いた。
確かに、大きくて洒落た外観だ。
入り口の前でぼんやり立っていると、中からオーナーらしき人物が現れた。
ギルドの制服とは異なるシンプルなコックコートに、青いネッカチーフを着けた小柄なウェディの男だった。
品よく整えられたグレーの髪。歳は同年代くらいだろうか。それでこんな店を持つなんて自分とは大違いだ。
自信ありげな目つき。手は腰にあて、足はどっしり肩幅。なんだか偉そうだ。いや、雇い主なのだから実際僕よりは偉いのか。
「募集見て来てくれた人?」
「は、はい。ぺ、ぺる…ぺると」
「そう。僕はガスパール。今日から入ってもらうから、よろしく!」
言って、さっさと中に戻ってしまった。
僕が来ないことに気付いたのか、また扉を開けて手招きをしたが、それ以上の干渉は最早なく。
閉められた扉がみたび開くことはないようだった。
何というべきか、こちらが頭の先からつま先までつぶさに観察したことを恥じるほど、僕の人となりには無頓着に招かれたような心地だった。
それとも、一目でこんなのを信用したのか?
兎も角も、僕は彼に『選択』の必要を迫られた。
きっと直ぐに背を向けて、その場を去ることもできたのだろう。
僕を従わせるものは何もなかった。
決めなければならなかった、自分で。
僕がどちらを選んだかは言うまでもないことだろう。
その後は、それはもう苦労の連続だ。
仲間がいるということ。それはなにも心強いだけじゃない。
何もしなければそれがバッドエンドの選択にだってなるって事だ。
僕にとってのバッドエンドは、いつしか僕の生き死にではなく
──横にいる"誰か"が望みを掴む手を失くす事。
そういうものに変わっていた気がする。
ああ、その誰かが自分で危険に突っ込んでいくんだから世話がない!
実際、僕らの誰にも未来を見通す目なんて無いわけで。
けれど、僕の目に見えるものを信じてくれる人がいる。
なら僕も、自分を信じて選んだほうを指差そう。
幸い、何とか、後悔はしてない。
※プレイヤーイベント【ビストロ ガスパール】2周年おめでとう!