どうも、スライムレースわからんぴのです。何からやればいいんだ……。今回は番外編。一番気になっていたアルウェーンの私なりの決着のおはなし。
アルウェーンが巨大な墓標に見えた。そんな話をします。
滅びの未来を回避して、いの一番にアルウェーンへ飛びました。というか飛べるの?って思いましたけどなんとかなったみたい。かがくの ちからって すげー。
滅びゆくアストルティアから人々を救い新天地を目指す巨大な方舟は、ただの観光宇宙船に変わっていました。
そこにはプクリポ以外の姿もあって、世界は救われていて。絶望の未来は単なるアトラクションに過ぎず、ガワは同じでも、中身は第一印象通りのテーマパークと化していた。サブクエも、終わったら「私の演技どうでしたか?」と聞かれ、まるで全てが茶番のようで、あの哀しくて美しい決意も、何もかもが消えてしまったようで、救われた世界なのに、なんだか寂しい町が広がっていた。
でも、こんなことを言っていた人がいて。
「この宇宙船はラグアス王子が予知した未来を元に作られたんですって。でも、まるで本当にあったみたい。」
この言葉を聞いて、もう一度アルウェーンを見渡した時、この町が墓標のように、あるいは慰霊碑のように感じた。

主人公は現代を守るため、1000年後の未来を滅ぼした。その決断を悔いることはないけれど、1000年後の彼らの悲哀も、絶望も、そこから立ち上がろうとする強さも、そのすべてがなかったことにされてしまうというのはやるせないと思っていた。だからこそ、覚えていてやることがせめてもの手向けだと、そう納得したつもりでした。
でも、主人公が死ねばアルウェーンを見た人はいなくなる。
予知したラグアス王子、1000年後の彼らに笑顔を届けようとした団長、数名は知っていても、いつかその記憶は風化して消えてしまう。
そうならないように、自分たちが滅ぼした彼らのことを忘れないように。ラグアス王子は観光宇宙船アルウェーンを作ったんじゃないだろうか。
無論ここまで完璧に同じものができたのは歴史の修正力もあるかもしれないけれど。行動したのは人だ。
母も父も亡くし、犠牲の上に立つことを知っているラグアス王子。死者の名誉を守るため、自らの功績と共に真実を闇に葬ることを選べるラグアス王子だからこそ、自分達の未来のために犠牲となった彼らへの弔いに、物語として語り伝えることを。たしかにあった虚構の町を作ることを思い付けたんじゃないだろうか。
この町の全てはフィクションになった。実在の人物・団体とは一切関係のない物語。
複製体が自ら死を選ばなければ魔物となり果てることも、母と慕う相手はただのAIにすぎないことも。
灯りを失っても進み続ける強さも、導を失っても花に小さな救いを見出だした美しさも。
全て作り物で、本物じゃなくて、でも、これから1000年紡がれる、感動を与える物語になった。
それって多分途方もないことだ。だって1000年前の物語ってどれほど今この世界に残ってるだろう。源氏物語とか、竹取物語とか、そういうレベルだ。
誰かがそれに感動して、誰かに話したいと思って、伝えたいという衝動に駆られて。そうじゃなきゃ1000年先までなんて繋がらない。
感情を許されなかった彼らが1000年間、多くの人々の心を動かす物語に生まれ変わったのだとしたら。
それは、なんて美しい物語だろう。
全部フィクションだけど。住民の名前は一字一句変わっていないんです。ハ行で構成された名前たち。適当な名付けにも見えるけど、ははは、ひひひ、ふふふ、へへへ、ほほほ、どれも笑い声。プクリポの本能を想起させられる名前。
誰も取り零されなかった。救われた未来で救ってやれなかった彼らは、失われながらも、その存在は未来に連れていかれていた。
それはまるで、慰霊碑のようだった。
どこにあるとも知れぬ新天地を目指して星の海を彷徨うアルウェーン。その物語がどうかいつまでも繋がりますようにと。どうかいつまでも、誰かを笑顔にする宇宙船であってくれますようにと、そう願ってやまない。
アルウェーンのおはなし