アマラークの話をしよう。一人一人が生きている、そんな美しい国の話をしよう。

7.0の時、イルシーム卿に次いで強い赤青兵士コンビの赤も死んでて。あの襲撃、ほんとに切迫した状態だったんだなって……。半ネームドってかキャラデザがモブ違ったから油断しました。
そしたら青さんが「平和になっていくのはいいけどあいつが生きていたことを忘れていくみたいでちょっと寂しい」って言ってて。
大切なものがあるわけです。失って、心にその形の穴が空く。辛くて悲しくて、一生その穴は埋まらない。でもその穴がある限り、そのことをずっと大切に思ってるって感じられる。
そのはずなのに、いつしか自分は日常に帰る。決定的に何かが欠けた異常が日常になって、違和感すら覚えなくなって、悲しくなくなってしまったことが寂しくて、申し訳ないような、不甲斐ないような。
時間という薬が痛みを奪い去って、それを再生と呼ぶ人もいるけれど、傷がかさぶたに覆い隠されてしまったことに一抹の寂しさを覚えてしまう、そんなこともあるわけです。
そういう心情表現。この一文から無限に味がするんだ。
複雑で難儀なこの心。これをどう乗り越えていくか。彼はね、二度目の襲撃を経て、この国があることが相棒の生きた証だって思うようになったんだって。「もう寂しく思うことはない、この国はあいつの理想とした国だから」だって。
正しく死を乗り越えたんだ。囚われず、忘れず、心の大切なところにその人を置いて、今を生きていく。
こういう未来へ繋がっていく物語がこの国の至る所にあるんだよ。
俺が好きなのは地下牢の囚人と見張り番さん。
最初、この二人の間には当然距離があった。囚人は「もしここにフーラズーラが現れたら見捨てられて俺は死ぬんだろうな……」って言ってた。
でも、一度目の襲撃の時、見張り番さんは囚人を助けてやった。そしたら囚人はその恩返しのために武術を習いたいって言い出して、見張り番さんの嘆願とリズク王の許しもあってそれが叶い、二度目の襲撃の時、囚人は子供を助けたんだ。初めてありがとうって言われたんだって。いい言葉だなあって、言ってて。見張り番さんはそんな彼を見て、彼を兵士にできないかって考え始めた。
囚人の彼はきっと奪うことしか知らなかった。そういう人生だった。でも初めて与えられて、その善意が彼を動かしたんだ。そしてそれが、小さな子供を生かした。
少し、卿と前女王さんの関係にも似ているよね。こういうことが、この国の当たり前なのかなって思うと、ほんとうに愛おしいと思う。
許可を与えたリズク王もいい王様だよね。この国に来た当初から、彼は女性の社会進出のために法を変えようとしてた。変わることを恐れない人なんだ。変わらなければ何も始まらないと知っている人。そして、変わるために誰かの力を借りることを知っている。法律家さんとか、財務の人とか。だからこの国はこれからも安泰だって確信できる。
彼は武術はあんまりだけど、襲撃の時には皆を指揮して戦った。卿の家にはリズク王の落書きがある戦術書があって。二人でたくさん語り合ってたらしいんだ。山賊との戦いに備えてなのかなんなのかわからないけど、この話を聞いて、彼の努力がきちんと実を結んだんだなって思った。
他にも、守られてる立場に甘んじることを良しとしない女性然り、妊娠中のお嫁ちゃんのためにフーラズーラぶん殴れるよう訓練始めたお姑さん然り、この国はそれぞれがそれぞれに努力することを惜しまないんですよ。誰かがやってくれるでしょ!とか兵士もっと戦力になってよやくめでしょとか言わない。同じ傷を抱えた人達が寄り添いあって立ち上がろうとしている。皆で英雄になる。
この世でいちばん美しいもの。助け合うこと、救いの連鎖。綺麗事かな。それでも俺は好き。この国では当たり前のようにある優しさが大好き。
すべてのいのちはべつのいのちとであい、なにかをうみだす。
人との繋がりが、新たな未来を作る。それを丁寧に描いてくれた。
この国はやっぱり背景情報が多くてちゃんとしてるよね。住民会話を追っていると思うんだ。一人一人に心と人生があって、それぞれの選択がそれぞれの未来を切り開いた。俺ももちろん元凶を倒したけど、被害がなかったのはもう何一つ喪わせまいという彼ら自身の努力の力なんだ。この国は生きてるんだよ。
三つの地域の中で一番社会としてきちんと出来ているこの国は、一度滅びたこの世界が再生する、その最前線に立つことになるんだろうな。
通りすがりの俺が、その一助になれた。こんなにも誉れ高いことはない。
アマラーク、神でした。お話だけじゃなくて住人会話も含めて。知れば知るほど好きになれる、そんな国でした。
ほんとうに、美しい物語だった。
ありがとう、ドラクエ10。