人族の王は困惑していた。
目の前にいる、エルフとルディア族のハーフであろう小娘にしては、高すぎるパワー、そして魔力があるからだ。
魔力にもパワー優れた者……と考えれば、ふと魔王を思い出させる。
こうして戦っていると、思い出すのは過去の人魔戦争の終止符を打った魔王との戦い。
あの頃は辛かった、苦しかった。
食べる物は少なく、多くの死者が出た。
俺自身の両親も、戦争に駆り出され、そして死んだ。
現在の妻であるもと姫やお義父さんも、魔王の脅威によってそうとうに苦しまれていた。
しかし、同時に一番楽しい時期であった。
剣術や魔法にうちこみ、強さだけを求め、愛し、奪い合った。
間違いなく、もっとも俺が輝いていた時期だろう。
強さだって今よりも断然に持っていた。
戦争の後の俺は政治、子育て、貴族の機嫌取りとなんとまあ惨めであったか。
俺が子育て……ね、笑わせてくれるわ。
勿論、子供は可愛く、とても幸せな時期であった。しかし、輝いてはいなかった。
時々、戦うことはあった。
しかし、そのほとんどは守る、見せつける、鍛えるなどといった落ち着いたものだ。
勿論命の危険はあった、しかしそれは守る者が居るための不自由からくる危険性だった。
何人もの刺客すべて、俺を殺しに来ただけならば負ける通りはない。すべて中級の魔法で吹き飛ばしてしまえばいいのだから。
しかし、今の戦いは本当に魔王との戦いを思い出させてくれる。
こいつは俺だけの命を狙い、そして俺を殺すに不足しない力を持って戦いに望んでいる。
血が騒ぐ。
「ふふ、ふははははは! なんとも楽しいなぁー、戦いと言う物は!」
ふと思い出す、魔王は竜人族の血を持っていたな。
もしもこいつの血に竜人族の血が混じっているならば、筋力と魔力の両立も不可能でない。
しかし、それにしても大きすぎる魔力である。
戦闘センスは良い、あの赤い瞳がルディア族特有の戦闘のセンスを物語っている。
しかし、戦闘経験が足りなすぎる。
もし彼女が俺と同じだけの戦闘経験を持っていれば、劣化した俺なんぞ、一瞬で跡形もなく消し炭になっていた。
しかし、まだ俺は殺せていない。
このままなら、間違いなく俺が勝であろう。
そしてこいつは死ぬ。なんとも惜しい、しかし俺が死んでやる訳にもいかん。
「その力……惜しいぞ……聞いておこう、俺が負けることは無いだろう、だから俺の配下となる気はないのか?」
言ってみておいて何だかが、配下にするのは無理だろう。
今さら配下となると言ったところ、誰も信用できん。何より俺自身が信用できない。
そして、こいつの目は異常者の目だ。
かつての俺と同じ、魂の在りどころを戦いに置いている。
だからこそ……強いのだろう。
「それはできんな」
当然の答えだ、わかっていた。
面白い。とても面白い、ならば最後まで楽しませて貰おうじゃないか。
おっと、思わず笑みが漏れる。
「なぜなら我は負けん、死ぬのは貴様だ」
!?
やつの魔力が格段に上昇していく。
どういう事だ!?
突発的に魔力の最大値を上げる術など見たことがない!
「驚いているだろう、こんな技見たこともないと。
当然だ、これは技ではない、力の解放なんだからな!」
あまりにも大きすぎる魔力が全身からこぼれ出し、美しい青いオーラが溢れる。
しかし、すこし魔法の教養がある者が見れば恐怖に打ち震えるであろう。
人は普通、溢れ出す魔力は見えない。
意図的に出さない限り溢れ出すような魔力は極々わずかであるからだ。
しかし、彼女から溢れ出すオーラは均等に中級以上の魔力を持っている。
中級程度の魔力なぞ、掻いて捨ててやると言わんばかりに……。
「何者だ……なぜそんなにも大量の魔力を持っている!? ありえない……ありえないぞ!」
この現象を、俺は知っている。
見たことはない、書物の上でしか読んだことない現象。
しかし、もう起こり得ない、ありえない、絶対に起こり得ない。
「とっくに気付いているんだろう?」
ああ、わかっている。
わかっているが認められない、信じられない。
これは紙の上の問題ではない。
現実に起こっている現象なんだ。
そうやすやすと解答欄に書き込めるわけがない!
「私はな竜人族と戦闘民族ルディア族との血を引き継ぎながらにして、祖先帰りを果たした……唯一のハイエルフ族ッッ! 名はあけふだッッ!」