「ガ、ア……ッ……」
巨躯がぐらりと揺らぎ、凄まじい地響きとともにドラゴンが石畳に倒れ伏す。
静寂が訪れた。
「ハァ……ハァ……勝っ……たのか……?」
ぐみがその場に倒れ込み、カナーも大盾に寄りかかるようにして荒い息を吐く。ギルさんもなんとか体を起こし、力強くうなずいた。
ボロボロで、傷だらけで、誰もが限界を超えていた。けれど、誰ひとり欠けることなく、私たちは凄惨な迷宮の死闘を生き抜いたのだ。
熱気と血の匂いが漂う静寂の中、私たちはただ荒い呼吸を重ねていた。
カナーの甲冑からは焦げた肉の臭いが立ち上り、大盾を握りしめた指は固着して開かない。ぐみは折れた腕を抱えたまま石畳に突っ伏し、荒い吐息とともに血の泡を吐いていた。壁際に座り込んだギルさんも、胸を大きく上下させながら麻痺した脚を力なく伸ばしている。
全員が、本当に死の寸前だった。
「……おい、新米」
掠れた声でぐみが笑う。その顔面は半分血で染まっていた。
「お前の……最後の回復が届かなきゃ、俺たち全員……肉塊になってたぜ」
「ぐみさん……っ」
膝の震えが止まらない。私は激しい魔力酔いと脱力感で吐き気を覚えながら、這うようにして三人のもとへ寄った。使い果たした魔力の底を削り取るように、途切れ途切れの『ホイミ』を順番に捧げていく。小さく温かな光が灯るたび、カナーの喉から重く苦しい安堵の息が漏れた。
「……見事だ。お前は立派に、我らの背中を守り抜いた」
ギルさんが煤けた手で私の頭を力なく撫でる。その手もまた、細かく震えていた。
崩落した天井の隙間から、一筋の光が差し込んでくる。倒れた巨躯の傍らで、私たちは泥と血に塗れながら、生きて光を仰いだ。ギリギリで繋ぎ止めた命の重みを、痛む全身で確かめ合いながら。

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