第2章:死肉に群がる偽りの絆
死の淵をさまよっていたりょうすけを拾ったのは、たまたま雪原を通りかかったランガーオ村の自警団だった。青い皮膚と頭部の角を持つオーガの少女に介抱され、一命を取り留めたものの、心に刻まれたダイコンの残酷な死の記憶と脳裏にこびりついた血の臭いは拭えない。
運び込まれたランガーオ村の冒険者ギルドは、安酒と凝固した血煙、そして魔物の腐肉の臭いが充満する荒くれ者の巣窟だった。そこにはりょうすけのように異世界から流れてきた「転生者」たちが数多く溢れていたが、彼らは世界を救う勇者などではなく、暴力と欲望に身をやつし、他者を喰い物にする泥まみれの生存者たちだった。不器用で生真面目、知識も拙い人間・僧侶のりょうすけは、文字通り「腐肉に集まるハエ」たちの格好の標的となる。
「おいおい、僧侶の兄ちゃん。一人じゃこの大雪原じゃ三日と持たねえぞ。俺たちのパーティに入りな」声をかけてきたのは、濁った眼光を持つベテランの荒くれ者たちだった。ダイコンを惨殺され、孤独と恐怖に押し潰されそうになっていたりょうすけは、彼らの親身な態度をすがるような思いで受け入れてしまう。不器用ながらも人の役に立ちたい、生き残りたいと願う彼は、己の命を削るようにしてなけなしの魔力を振り絞り、擦り切れるような思いで彼らの酷い傷を癒やし続けた。
しかし、彼らが求めていたのは仲間などではなく、単なる「都合の良い使い捨ての生体回復薬」であり「万が一の際の肉壁」に過ぎなかった。
雪原の奥深く、再び凶暴な魔物・アイスリザードの群れに包囲された瞬間、彼らの本性が剥き出しになる。
「おい、人間! 前に出ろ! 回復呪文を唱え続けながら魔物の意識を引け!」
「え……? でも、僕の魔力はもう枯渇して……肺が焼けるみたいで……」
「黙って盾になれ! 役立たずの肉塊が!」
暴言とともに背中を強く蹴り飛ばされ、鋭い爪と牙の前に放り出される。りょうすけは凍てつく泥と血吐く雪の中に叩きつけられ、己の甘さと無力さを、そしてこの世界の醜悪な現実を骨の髄まで思い知らされた。