第5章:神意という名の混沌と練磨
『はじまりの地』の見習いとして行動を許されたりょうすけは、この世界の歪んだ構造を学んでいった。たった一人の神の戯れによってこの地に投げ込まれた転生者たちは、命を落とした者ばかりではない。病で伏せっていた者、死の直前に不吉な契約を交わした者、事故の瞬間に空間ごと転移させられた者――。多様な背景を持つ彼らは、生き残るために惨めな抗いを続け、時には魔物以上に残虐な奪い合いを繰り広げていた。
「神は我らに救済など与えておらん。ただの盤上の駒だ。だからこそ、人は人と繋がり、泥を舐めてでも抗わねばならん」
レオンライトの言葉を胸に刻み、りょうすけは血の滲むような修行に没頭した。自分にはギルティのような天才的な感覚はない。カナーのような圧倒的な肉体も、コブノタンのような気迫の剣技も、グミのような不屈の体術もない。ダイコンのように一瞬で踏みつぶされる弱者だからこそ、誰よりも正確に、誰よりも愚直に呪文の構成を身体に叩き込んだ。
詠唱の速度、魔力の波長合わせ、傷の深さと出血量に対する最適な回復量の計算。泥を舐め、指先の皮膚が擦り切れ、吐血するほどの修練の毎日。隣ではグミが拳の皮を破らせながら突きを繰り出し、コブノタンが悪態をつきながらもりょうすけの間合いの狭さを口汚く指導してくれた。不器用な彼の手に刻まれた無数のマメと引き裂かれた傷跡は、やがて他者の命を確実に繋ぎ止める「本物の僧侶の手」へと変貌を遂げていく。
そして雪原の季節が最も深い極夜へと向かう頃、ギルド全体を揺るがす未曾有の災厄が訪れる。