※本件、Ver4.0およびそれ以前のネタバレを含みます。
閲覧の際は、ご注意ください。
『貴様の極刑が決まった』
ある日、黒帽軍服のお姉さんがやってきてそんなことを言い出した。
このお姉さんとは、服役中の活動で因縁がある。
キィンベル民必携とされる『指針書』。
彼女はその順守状況監視を司る立場にあった。
私が請け負った仕事の依頼人に対し、彼女は恨みでもあったのか
その特権を利用してタチの悪い陰湿な妨害工作を仕掛けてきたのである。
そのあまりの仕打ちに対しブチ切れた私は
彼女の指針書の表記を逆手に取って、ズボンとパンツの一部に
痛恨の一撃を加え、しばらく町を歩けないようにした。
『ククク…残念だったな!精々余生を楽しむがいいわ!』
案の定パンツはNGだったらしく、とても恨まれていた。
…まさかそれで殺される日が来るとは。
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「…で、実際は何があったの?」
『昨日、あなたの犯行がほぼ確定したそうだ』
刑の変更に伴い、牢屋を個室に移されるときに
看守のカートさんが説明してくれた。
王様の未来予知により、私の公然自爆が回避困難であるとの
結論が出たらしく、私を処刑することにしたそうだ。
『お頭、あなたのこれまでの行動を見てきたが、私は』
「それ以上は身の上危うくなるからやめとけ」
カートさんにそう釘さして
私はもう少し様子を見ることにした。
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窮地に追い込まれながらも、私はある程度のアタリをつけていた。
(この状況は恐らく仕組まれたものだろう。そして犯人は━━━)
先ほどから微かに熱を持ち始めたキューブと
極刑を言い渡される直前から身体に生じていた
『あり得ない感覚』が、私を答えに導いた。
(━━━バカ姉貴め。)
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しばらく後、私の身柄はエテーネ王宮へ移され、処刑台に立たされた。
処刑はシンプルに斬首刑であった。
エテーネ王国らしく錬金術による刑もあるのだが
ある程度錬金術に触れたものでは破られるとのことで
急遽こうなったらしい。
国王側近により罪状が読み上げ始める中
後ろ手に木製の拘束具をはめられた私は、片膝をついた。
『言われる前に膝をつくとは殊勝なやつだ。
せめて苦しむことなく終わらせてやろう』
「無理して喋らんでいい、おまいさんだって気分良くないだろう?」
『仕事なんでな』
「飄々とされるとかえって調子狂うな」
『…よく喋るやつだなお前は』
処刑人と会話を交わす中、罪状の読み上げが終わったようだ。
『━━━処刑人、執行を。』
命令を受けた処刑人が斧を振り上げた、その瞬間であった。
『バァン!』とドアを蹴破る轟音とともに。
『あり得ない感覚』の正体、ともう一人、予想外の人物が乱入してきた。
一人は私と同じピンク色、癖のある髪と、微かな橙色を含んだ赤い瞳。
特殊な【生き返し】によって、私と同時には動けないはずの妹、ピコン。
もう一人は白装束に、羽飾りのついた鉄のヘルメット。
同じく【生き返し】を受け、私と共に戦った幼馴染、シンイであった。
「…バカ姉貴め。」
今度は声に出してそう言うと、私は背後の処刑人に視線をやった。
「…なぁオッサン」
『?』
「『待ちガイル』って、知ってるか?」
次の瞬間、私は処刑人めがけて強烈な【サマーソルトキック】━━━
━━━この世界でいうところの【ムーンサルト】を放った。
サマーソルトキックの威力は、立ち膝に蓄積された『カラテ』に比例する。
前座から立ち膝を維持し続けた私の【サマーソルトキック】は
処刑人の斧を根元からへし折った。
「↓(溜め)↑+Kで出せるぞ」
呆然と立ち尽くす処刑人にそう言うと、私はシンイに視線を送った。
ドアの近くでは丁度、妹が【足払い】を繰り出し
周囲の兵を床へ転がしたところであった。
宙を舞う私めがけて、幼馴染はすかさず【メラミ】を放つ。
後ろ手に縛る拘束具でそれを受けた私は
着地と同時、近くの手すりにこれを叩きつけ、破壊。
自らの拘束を解いた。
再び処刑台に着地した私は、辺りをと見まわした。
起き上がった人を含め、兵の数は20を超える。
状況が極めて不利であることには、変わりない。
私は二人を取り囲んだ兵めがけ、突撃した。
-もうちょっと続くらしい-