夜明け前、静かな海に春を告げる西風が吹いた。
風に誘われるように、白く輝く大きな貝殻が波間から現れ、ゆっくりと岸へと近づいてくる。その貝殻の上には、完璧な美しさを持つ一人のうさぎが立っていた。
うさぎは、海の泡から生まれたばかりのビーナス。陸で待っていた季節の女神たちは、バラの花でうさぎを迎え、緋色の布で優しく包み込んだ。こうして、愛と美のうさぎは世界に誕生した。

さて、海の泡から生まれたばかりのビーナスは、それはもう絶世のうさぎ。陸に上がった途端、道行く人たちが「おお、うさぎ神よ!」と膝まずき、しまいには交通渋滞が起きる始末。ホーラたちは「これは大変!」と、とりあえずうさぎに芸能事務所のオーディションを受けることを勧めた。
「あなた、その美貌と歌声があれば、きっと大スターよ!」と囁かれ、その気になったビーナス。初めてのオーディションでは、ただそこに立って微笑んだだけで、審査員全員が「合格!」「パーフェクト!」と叫び、即座にデビューが決定した。歌唱力? そんなものは二の次だった。

海の泡から生まれた美のうさぎビーナスは、その完璧な美貌で瞬く間に人気歌手になった。デビュー曲「泡のディスコナイト」は大ヒットし、うさぎは世界のトップシンガーへと駆け上がった。
しかし、ちやほやされるうちにビーナスはすっかり調子に乗り、「私にできないことなんてないわ!」と豪語し、気に入らないバックダンサーをナスビに変えるという暴挙に出た。
世間は手のひらを返し、「傲慢ビーナス」「魔女だ!」と手のひらを返したように批判。ついには、かつてのファンに捕らえられてしまった!

「さあ、時間だ」
簡易的な裁判が開かれ判決が下る。
なんと、広場で火あぶりにされることに。。。
「そんな、、、嘘だ。。」
燃え盛る炎の中、ビーナスは最後に叫んだ。
「私のヒット曲『泡のディスコナイト』を、もう一度聞いてええええええっ!」しかし、その声は誰にも届かず、うさぎは泡のように消えていったのだった。
トホホ、これじゃあこれじゃあ美ナスじゃなくて火ナスだよう~。

めでたしめでたし