『魔王、これで最後だ!』
「よく私をここまで追い詰めた…流石は伝説の剣の力ということか…!」
『え?これバザーで買った奴だけど。伝説の剣とかじゃないぞこれ』
「えっ?普通こういう時は、
世界に一つしかない剣で討伐に来るものじゃあないのか?」
『どこの古典の魔王だお前は。
お前には何か弱点となる武器でもあるのか?』
「武器についてはないが」
『じゃあ別に特別な武器でなくたっていいだろ。鋼鉄の剣でもさあ』
「よくない。そんな市販品で殺されるなど…」
『事実、市場に出回ってる武器が効いてるじゃないか』
「ま、まあそうだが…普通の武器や魔法等は全く通さないはずなのだぞ?」
『ああ、調べたら掲示板に攻略情報書いてあったからな、対策してきた』
「掲示板ッ!?いやいや、私の情報が載っている訳がないだろう」
『今の人間社会をナメちゃいけない。敵の情報なんて解析されて筒抜けだぞ』
「ぐぬぬ…で、何て書いてあるのだ、それには」
『物理も魔法も殆ど効かないクソボス。しかもソロプレイ強要。
現状会心錬金と食事で押し切るしかない。
広場で修正提案されまくってるし修正されると思う』
「なんだその身もふたもない情報は」
『実際お前クソボス過ぎるんだよ。何回会心ぶち込んだと思ってる』
「いやあの…ギガデインとかは普通に効くぞ?」
『あのな…そんな呪文は勇者しか使えないぞ』
「えっ。貴様は勇者ではないのか?」
『戦士だが』
「何故ここにいるのだ」
『いやだって話の都合上な』
「都合とか言われてもだな…魔王討伐は勇者の役目じゃないのか?」
『今の勇者の役目は海の向こうで
ミニスカサンタやゴスロリルックで愛でられる役目だぞ』
「そいつ本当に勇者なのか…?」
『ゴリラとか言われているが普通に勇者だ。間違いなく強い』
「そ、そうか…だが貴様もギガブレイクは使えるではないか」
『剣を極めれば誰でも使えるぞあんなの。
それに今聞いた話だとお前雷耐性がないって事だろ?
ギガブレイクは光属性だから効かないだろう』
「えっ、あれ雷ではないのか?」
『お前の情報は古いんだよ…しかし魔戦のがよかったかなこれは…』
「悩んでいるところ悪いが、もう一つ聞きたいことがある」
『どうした』
「広場、とか修正提案、とか言っていたがそれは一体何だ?」
『いやお前強すぎるんでそのうち修正されるんじゃないかとな』
「いやいや、修正って。誰がするのだ」
『神とかそういうのがじゃないのか』
「そんな理不尽な事が起こるわけがないだろう」
『そうか?少し前に出てきた砦のボス…あれ無茶苦茶強かったな』
「ああ、今まで出てきた人間どものデータをかき集めて対策を施した、
素晴らしいモンスターだったからな」
『あれも修正されてるぞ』
「…そういえば倒される前日、何か不調を訴えていたようだが…
そ、それが修正だと!?」
『そうだ、強すぎるんで修正された。
流石に全範囲補助呪文解除ランダムで状態異常2つはやりすぎだ。
おまけに全耐性・ベホマまで備えてるんじゃあな』
「り、理不尽だぞ貴様ら!」
『そうは言ってもそれが世の中の要望という奴でだな…。
あ、敵が強すぎるんで修正して下さいってのはそこまで多くないぞ。
多いのは「味方が強すぎるんで弱くしてください」とかだな』
「…は?貴様らは何を言っている?
何故自分達をわざわざ弱体化させているのだ」
『そりゃ活躍したいからだろう。
あんまり強すぎる仲間がいると活躍できないからな』
「…貴様らの仕事は世界に平穏を取り戻すことではないのか?」
『まあ、それもあるが…個人的にはスカッとしたいんだよ』
「スカッと、とか言われてもな…
だったら討伐はその強い仲間に任せておけば良いのではないのか?」
『甘いな。いいか、ある異世界の文献によると、
そうやってパーティからあぶれてしまった所謂弱職という連中が
ずっと街中に座り込んでパーティ募集をしていたそうだ。
それを2時間とかな。』
「じゃ、弱肉強食よな…「強くしてください」のほうがいいのではないか?」
『そうすると今度は「世界のバランスが崩れる」派が台頭してだな…
人間側も一枚岩じゃないんだよこれが。
いや、俺もなるべく弱職を強くしてバランス取ってほしいんだがな?
今までできてたことをやれなくなるって、かなり凹むぞ、マジで』
「た、大変そうだな…」
『まあ、そんなわけでそろそろトドメを刺していいか?』
「勝ち誇っているところ、悪いのだが…」
『なんだ、辞世の句でも残すか?』
「変身していいかな、そろそろ」
『掲示板にその情報はなかったんだが…』
「お前の情報は古いんだよ」
『そうか』
「さあ来い!私を倒してみろ!」
『行くぞウオオオオオ!!!』
先生の次回作にご期待下さい!