『失礼します』
「遠いところからようこそ。どうぞお掛けになってください」
『ありがとうございます』
「それで、本日は私の討伐にいらっしゃったとか」
『はい、その通りです』
「ではまず討伐動機を伺ってもよろしいでしょうか」
『はい、まず最も大きな理由としては、
あなたのラスボス目的が「いつの間にか裏から世界支配しちゃう系」
であったためです。
最近流行りの「ひたすら狩りして素材集めてたら出くわした系」とか
「倒してもバッドエンド系」のような不毛なものでもありませんし、
あまり目立たずに社会貢献ができることから討伐対象とさせて頂きました』
「なるほど。しかし目立たずに社会貢献と言うのは
気づかれない可能性がありませんか。
表面的には何の貢献にもなっていないのでは。」
『そこは上の人々が分かってる系ですので問題ないと思います。
スタンプ大王との交渉も済んでおりますし。』
「わかりました。社会貢献と仰いましたが、私を倒すと魔物が居なくなり、
日々の暮らしが立ち行かなくなる可能性は考慮されていますか。」
『ストーリーをネットでググって続きがあることが分かっているので
問題ないかと思います。ガセだった場合はキラキラ拾いに誘導致します。』
「あまりググって先を見るのはオススメ出来ませんが…」
『攻略サイトを事前に読まないと地雷扱いされますので』
「そうですか…」
「では続いての質問ですが、ご職業は」
『魔法使いレベル85をやっております』
「何か資格などはございますか」
『ピラミッド8層魔法免許があります』
「8層ですか…」
『何か問題でも?』
「確かに以前ならそれでもよかったのですが、
最近8層魔法は比較的楽に手に入りますから。9層なら文句無しなのですが」
『でしたら悪夢終焉魔法免許でしたらいかがでしょう』
「マニュアル十字ではありませんか」
『オートマ免許です。先月ゴールドメダルに更新して来ました。』
「すばらしい。それなら問題ございません。」
「そちらのお仲間は肉ですか。それとも酒場ヘルパーさんでしょうか。」
『この時間帯は肉は難しいのでヘルパーさんになります』
「ヘルパーさんだと装備は問題ありませんか」
『毒物呪い麻痺取扱免許があります。睡眠もバッチリとっていますね。』
「勇者が水着なのはどうしてですか」
『趣味です』
「服装自由と書きましたけれども、さすがにどうかと思うのですが」
『課金装備の方が神の印象がよくなると思いまして』
「せめて鎧を買いませんか」
『すみません、アイスを買いすぎまして』
「そうですか…」
『では、そろそろ…』
「ありがとうございました。面接の結果は追って通知させて頂きます。」
『あの、戦闘は…』
「それは二次面接となります」
『…』
「おつかれさまでした」
『交通費、いただけますか』
「はい」
完