シーンの冒険日誌

最近の魔法の迷宮のコインボス事情が変わってきているという。
どうやらコインボスから少なからぬ不満の声が挙がっているとのことらしい。
実際に迷宮で働いているBさんに話を聞くことが出来た。


『そりゃあもう当時は飛びつきましたよ。
もう古くなったマシンや、携帯機の外伝、リメイクなどに
押しやられていた我々に、再び活躍の機会が訪れた訳ですから。
本当に最初は順調でした。』


ーーー少しずつ変わっていったと？

『まあ2年ぐらい前はね、一人で冒険者達を圧倒出来ていた訳ですよ。 
景品も当時は考えれないほど価値がありました。
特にタイガークロー全盛の時代でしたからね。』

『でもそんな時代が修正でなくなって…
と言っても当時は緩やかな変化だったように思いますがね。 
大して景品に興味がなくなり始めた。
出揃ったというのもあるんでしょうけれども。
そして少しずつ冒険者達に圧倒されるようになってきた。』


ーーー冒険者も時代とともに強くなりますからね。

『いや、それもあるんですが…
連中、ローカルルールか何かで耐性必須とか言い出したでしょう？』


ーーー冒険者全てとは言いませんが、野良で無耐性はあまり推奨されませんね。トラブルの元になることもあるので。勿論各個人の自由ではあるのですが、世間はそういう風潮にはなっていますね。

『それがいけなかった。
例えば僧侶にマホトーンを掛けて崩すことが出来なくなった。
これはいただけない。』


ーーーそりゃあ、まあ。僧侶に封印は致命傷ですから。対策はしてくるでしょう。

『ついでに最近は即死ガードも珍しいもんじゃないんです。
結局ツインクローで攻めるのが一番いいという始末。
これが私らにはつまらない。
でも業務命令で効かなくてもなるべく使えとか言われる訳です。』


ーーー攻略法があるのはボスの宿命でしょう。それより名前バレますけど、よろしいんですか？

『別に構いませんよ。その攻略法が問題なんです。
彼らは戦闘前に充分に対策できるくせにこちらにはそれが許されていない。

大体1対4とかおかしくないですか！？
最近4諸侯さんが初の同一数マッチに成功して喜んでましたけど、
あれもおかしいんです。

最初主力は動くな。
耐性はザルにしろ。
疲れてきたら回復してやれ。

冒険者の連中は散々対策してきてるのに、我々は所謂地雷耐性を強要される。
どうしろと？なんでこんな制約が入るんですか！？』


ーーーいやあなた確かかなりの強耐性持ちでしたよね？

『いやそれも一体だからって前提ですし。
三体の場合でも他は眠らされるんで意味ないです。』


ーーーはあ、でもステータスはボスな訳ですから。1対1とかはさすがに無理ですし、ハンデは必要なんじゃないかと…。

『いやもう最近ボコボコじゃないですか。
なんだか耐性下げる技まで使ってくるし、攻撃力も下げてくる。
やたら瀕死でふみとどまるし、すぐ蘇生するし。
1匹になったと思ったら即復活するし。
なんで連中ブラックリストに入れられないんですかね？』


ーーー…もうカード流通量抑えて休まれては？

『いや…もう私とかは人気そのものがないんで。勝どきのせいで…。
最近の出番は達人さんのおこぼれぐらいですよ…』


ーーーそんなに出番ないんですか？

『道端にカード捨てられて凄く悲しくなったことがあります。
ああそうだ思い出した。最近イタズラで入ってくる連中がいるんです。
なんだか像前で無言で入ろうとしてパーティの連携が取れてない連中とか。
最近はそういうのを返り討ちにしてはストレス解消にしてますね。』


ーーー大変ですね、としか言いようがありません。

『もうね、景品変えてもらって、
なんだ…なんとか極とかいう名前でリベンジさせてもらうしかないですよ。 
我々も必死です。猫にまとめてフラフラにされる生活や、
斧ではたかれる生活はもう嫌ですから。きちんと上と交渉しますよ。』


ーーーそうですか。リベンジを楽しみにしています。ありがとうございました。


現在の魔法の迷宮の闇はかなり深いようだ。
今後のテコ入れが行なわれるのか？
Ｂさんの訴えは聞きとどけられるのか？
今後の展開を見守りたい。


完