※当記事の内容はフィクションです。
聖守護者の闘戦記が公開されてはや1週間。
盛り上がりを見せるアストルティアだが、裏ではトラブルが絶えないようだ。
そのトラブル被害者の一人が当日誌のインタビューに応じてくれた。
彼は僧侶のSさん(100・仮名)。
闘戦記コンサルタントに関わったことで
およそ500万ゴールド以上の被害を受けたと言う。
「まずは食事から、軽く安く上げていこうと言うところから始まったんです」
ーーー食事?
「エンドコンテンツでは皆食事を取っているから形だけでも従おうということで」
ーーーその食事の値段は?
「10万ゴールドでした。都内の三つ星レストランのパスタだとかで、これでも安いと」
メギストリスの日雇い労働者の日当は約4万ゴールドと言われている。
明らかに安いとは言えない。
ーーーそれで食事の効果は出ましたか?
「いいえ、よくわかりませんでした。個人的に恩恵はなかったのだと思います。結局ワンパンで瀕死か殺されますし」
Sさんは熱心なエンドコンテンツ参加者で、
これまでにも多くの戦いを死に延びてきていた。
しかしその彼の装備にも、コンサルタントは『熱心な指導』をしたと言う。
「ルフはまずい、って言い出したんです」
闘戦記のブレス装備認定は一般には60からと言われている。
彼の装備はルフの盾込みで80を超えており、
間違いなくレギュレーション違反ではない。
「今はブルームが主流だと。誤差みたいな0.1%が勝敗を分けることもある。こういったわかりやすい点でメンバーから責任を問われることは多いから盾を変えたほうがいいと言われました。」
『指導』に負けてSさんはブルームシールドを140万で購入。
実際には錬金石も含まれるため、見た目以上に値段がかかっている。
それでも勝てず、Sさんは次々と闘戦記製品を購入してしまった。
冷静になってから貯金額をみたSさんは落胆の色を隠せなかった。
ーーー一番お金がかかったのは?
「賢哲下…と言いたいんですけれど、『エルフ』はこれからもお金をかけなきゃいけないからこれが一番痛いです」
『エルフ』とは強力な精神安定剤のことであり、副作用もよくわかっていない。
エンドコンテンツ参加者に常用者が多く見られ、
最後には精神がハイになってしまうことから、
非常に危険な薬物の疑いをかけられている。
しかし販売元はこの疑いを完全に否定しており、何故か検証も進んでいないという。
専門家はこう語る。
「エンドコンテンツと言うのは一見して戦闘技術を競い合う場と思われがちですが、裏では大量のカネが動いており、向上心を利用した悪質なセールスが絶えないのです」
「彼らはこう言います。『あなたたちはただの人間。突然謎の光に包まれてボーンして敵を倒したり、道端に落ちている伝説の武器を使ったりする都合の良い存在ではない。だが、あなたたちはカネを使えばそれらに近い存在になれる。名誉も思いのままだ』と」
「今回の闘戦記、かなり厳しいですよね。彼らはそこにつけ込んでくる。こうすれば勝てる、と言う都合のいいところだけの情報を流す。そして荒稼ぎですよ」
「思い出して欲しいんですが、我々も道端から武器を拾えますし、なんかの光だって出せるわけなんですよ。ありもしないマンガの存在がさも現実にいるかのように語って、できる、なれる、その気にさせるというのは本当に悪質な手段ですよ。え?アンルシア?彼女はメインストーリー以外寄り道しない人でしょ?」
Sさんの手元にはただの羽が2枚しか残らなかった。
でも今後もカネを出すかもしれない…と不安そうに語っていた。
エンドコンテンツは魔窟なのである。
22日にはレベル3の公開。
被害者が増えないことを願うばかりだ。