「待て。その人をBANしてはならぬ。メラスが帰って来た。メンテナンス告知のとおり、いま、帰って来た。」と大声で広場のまとめブロガーにむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。
すでにブログのタイトルが高々と立てられ、スクショを撮られたセリヌンティは、徐々にアップロードされてゆく。メラスはそれを目撃して最後の勇、先刻、バグ流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、運営!BANされるのは、私だ。メラスだ。彼をトルネコ(人質)にした私は、ここにいる!」
と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついにブラウザに昇り、アップロードされてゆく友の両足に、齧りついた。群衆は、どよめいた。いいね。OK!と口々にわめいた。セリヌンティの記事は、取り下げられたのである。
「セリヌンピ。」メラスは眼に涙を浮べて手が滑った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、リーネにアクセを全滅される夢を見た。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁するイベントが起こらないのだ。殴れ。」
セリヌンティは、すべてを察した様子で首肯き、広場一ぱいに鳴り響くほど音高くメラスの右頬を4発ばくれつけんし、うち1発はメタボが吹き飛ぶほどの衝撃を与えた。殴ってから優しく微笑み、
「メラス、私を殴れ。サウンド・エフェクト・ボリュームを最大にして私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、疑惑発生判定に失敗した。初回限定特典で君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁するムービーが流れない。」
メラスは腕に唸りをつけてセリヌンティの頬をせいけん爆撃した。
「お疲れさまでした、フレよ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
A エンド
群衆の中からも、歔欷の声が聞えた。管理人は、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしとも金のつながりに入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの組織の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「オープンハウス万歳、マイタウン万歳。」
ひとりの少女が、王者のマントをメラスに捧げた。メラスは、まごついた。佳きフレは、気をきかせて教えてやった。
「メラス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メラスの裸体を、皆に見られて通報されるのがたまらなく口惜しいのだ。」
ゆうしゃは、マントのダサさにひどく赤面した。
B エンド
かんりにん「おめでとう。このゲームを かちぬいたのは きみたちがはじめてです」
メラス「ゲーム?」
かんりにん「わたしが つくった そうだいなストーリーの ゲームです!」
セリヌンティ「どういうことだ?」
かんりにん「わたしは へいわなティアに あきあきしていました。 そこで しょうにんようきゅうの あつい ヘビーゲーマーに マイタウンを におくで うりつけたのです。」
メラス「なに かんがえてんだ!」
かんりにん「◯◯す◯は ブログをみだし おもしろくしてくれました。だが それもつかのまのこと かれにもたいくつしてきました。」
セリヌンティ「そこで ゲーム‥か?」
かんりにん「そう!そのとうり!!わたしは けんりょくを うちたおす ヒーローが ほしかったのです!」
メラス「なにもかも あんたが かいた すじがきだったわけだ。」
かんりにん「なかなか りかいが はやい。おおくの モノたちが マイタウンをかえずに きえていきました。かせぐべき うんめいをせおった ちっぽけなそんざいが ひっしにいきていく すがたは わたしさえも かんどうさせるものが ありました。わたしは このかんどうをあたえてくれた きみたちに おれいがしたい!どんなのぞみでも かなえて あげましょう。」
セリヌンティ「おまえのために ここまで きたんじゃねえ!よくも おれたちを だざいを おもちゃに してくれたな!」
かんりにん「それが どうかしましたか? すべては わたしが つくったモノなのです。」
メラス「おれたちは モノじゃない!」
かんりにん「うんえいに ケンカをうるとは…どこまでも たのしい ひとたちだ! どうしても やる つもりですね。これも いきもののサガ か…よろしい。BANされる まえに うんえいのちから とくと めに やきつけておけ!!」
かんりにん は バラバラに なった