エルダー・ケンジャは既にパーティに入ったことを後悔し始めていた。案の定ショクアンセンタで雇われたのはハンマー持っていればいいというレベルのサンシタ・サイボーグ・バトマス二体であった。かろうじてキシン・メンポは搭載しているが、宝珠やベルトが整備されているかも怪しく、見る気にもなれない。このぶんでは自称モンススレイヤーとやらを名乗るこの男も信用ならないだろう。
「エルダー・ケンジャ=サン、ランチだ」
「ランチオネガシマス」
エルダー・ケンジャは懐から激安テンプラ・タマゴ・ソバを取り出し、ポットの合成プロテインで戻し、一気にすすった。いつにもましてマズい。星1の価値すら怪しいマズさである。しかしパッケージ裏面に記載された栄養効果はあるようで、HPMPが20ほど増強された。
モンススレイヤーは…なんとスタミナライスだ!エルダー・ケンジャはむせてソバを吐きそうになってしまう。間違いない、この男ヒヤトイをバカにしている。
「突入する」
「ヨロシクオネガシマス」
嫌な予感しかしないまま、一の災壇戦闘が始まる。
しかし!
おお、なんたることか!
現れた魔物が離れていくではないか!
「ギャヒッ!?ギラム=サン、これはいったいどういうことかッ!?」
「悪いねぇ、ちょっと今日の魔物は臆病みたいでさあ」
「そんな訳があるかッ!ワイロを渡されたな!ギラム=サン!」
「まあまあそういう日もあるよ…おとなしく荷物まとめてシュッカしな、ケンジャ=サン」
恐らくジュンパイ・クランの下級戦士の誰かの仕込みだろう。もはやチャンスすら与えず引きずり落とすということか。終わった…そう思ったその時である!
「イヤーッ!」
モンススレイヤーはハンマーを持ったまま高速回転!タツマキと化した!
「ハンマーでギガスラッシュの真似事か?そんなものの威力では!」
ナムサン!モンススレイヤーはタツマキとなって逃げ惑う雑魚モンスターを巻き込んだ!
「ヌワーッ!」
雑魚モンスターは吹っ飛ばされたまま、周りのモンスターを巻き込んで転がっていく。そこへ間髪入れずモンススレイヤーが突っ込んで行く!
「イヤーッ!」
「「「「「ヌワーッ!」」」」」
「違う!ただのギガスラッシュの真似事ではない!高速回転しながらランドインパクトを放っているのか!」
ゴウランガ!もはやバギムーチョ19号と化したモンススレイヤーは巻き込んだモンスターを絶えずノックバックし、反撃の隙を与えず更に巻き込んでいく!耐えきれずに消滅したモンスター・ソウルはキシン・メンポに吸収され、さらに唸りをあげてモンスターに襲い掛かるのだ!
もはやサイボーグバトマスとエルダー・ケンジャはその撃ち漏らしを掃除するだけでよかった。
「グヌゥ…かくなる上は、カラミティロイド=サン!」
ガッシ!!重量級モンスター・カラミティロイドがバギムーチョ19号をとらえる!!!
「ヌハハハハ!いくら強かろうが捕まえてしまえばただのヌノノフクよ!このままひねりつぶしてくれるわ!」
「カラミティロイド=サン、ニッシを詠め、イイネしてやる」
「気でも狂ったかモンススレイヤー=サン!」
おお、あれを見よ!モンススレイヤーからオーラが立ち昇っている!あれはミラクルブーストだ!
「今更回復がなんだと!」
「Wasshoi!」
モンススレイヤーは渾身の一撃を放った!
「往生際が…ヌワーッ!」
モンススレイヤーは全身から血を吹き出した!しかしそれが逆再生するように体に戻っていくではないか!
「あれはミラクルもろば切り!まさか!?」
モンススレイヤーは血飛沫を上げながら再び回転を始め、カラミティロイドに突っ込んだ!
「イヤーッ!」「ヌワーッ!」
「イヤーッ!」「ヌワーッ!」
「イヤーッ!」「ヌワーッ!」
「イヤーッ!」「ヌワーッ!」
「イヤーッ!」「ヌワーッ!」
「イヤーッ!」「ヌワーッ!」
カラミティロイドはしめやかに爆発四散!
「マタドコカデ!」
一の災壇の敵はすべて倒れた。
これで次の災壇へ行ける…と思ったその時!
「こうなったらお前らを生かして返すわけにはいかないなぁ…」
続く