とある名家に2人の“姉妹”がいました
“姉”は自信家でプライドが高く
ランドン山脈すら見下ろすような性格
“妹”は慈愛に満ち
ランドン山脈の雪をも溶かすようなおっとりした
母性の持ち主でした
“父親”は娘たちを平等に愛していましたが
“姉”は「私だけを認めてほしい」と不満を
募らせていました
ある日、“姉”は家の外を眺めながら考えます
家の周囲には、いつもガラの悪い
“事愛苦斗”たちがたむろしています
もっとも家には高性能セキュリティシステム
“Celesia”があるため、彼らは中へ入れません
しかし“姉”は思いました
「わざと中に入れて、ウチが追い払えばええやん」
そうすれば父親に認めてもらえる
そして“姉”は自ら“Celesia”を停止しました
なだれ込む“事愛苦斗”たち
最初は余裕でした
「こんなんウチ1人で十分やん」
ですが想像以上に厄介で、家は大混乱に陥ります
「これ……どないしよ……」
気付いた時には手遅れでした
当然、“父親”は激怒
家族は崩壊し、“妹”は居場所を失って遠い土地へ
旅立つことになります
新天地で“妹”は小さなカフェを開きました
誰にも頼らず始めた店はやがて7人の子どもにも
恵まれ少しずつ繁盛していきます
しかし“邪呉奴場”という悪質な地上げ屋が現れました
店だけでなく町そのものを潰そうとする存在です
どうにか退けたものの、“妹”は心労で倒れてます
さらに“邪呉奴場”にそそのかされた
長男“奈怒羅我”がグレてしまい
暴走族のリーダーに

兄弟たちによる壮大な兄弟ゲンカが勃発
力を合わせて制圧したものの
その代償として兄弟たちは散り散りに
そして後のある事件で、“妹”は帰らぬ人となります
残されたのは子どもたちが遺した“誓約の子”
時は流れます
客は減り、評判も薄れ
「そんな店あったっけ?」
と言われるほどになりました
まさに“創失の呪い”
それでも1人の“少女”だけは、この店の未来を
信じ続けていました
食いしん坊で、誰よりもこの店が大好きな少女です
“誓約の子”もまた、その想いに応えようと
店を守り続けました
しかし、ついに限界が訪れます
「もうあかん……終わりや……」
そう思った、その時でした
店の扉が開き、1人の女性が入ってきます
なんと、あの“姉”でした
店内を見回しながら、相変わらず偉そうに言います
「本当に不器用やな 店1つ守れんの?」
次の瞬間、“姉”は1枚の書類を差し出しました
そこに記されていたのは
誰も見たことがないほどの神がかった金額
店の再建どころか、未来永劫潰れないほどの資金
それは謝罪でも許しを請う言葉でもありません
もう会うことのできない“妹”へ向けた
“姉”なりの不器用すぎる贖罪だったのです
“姉”の資金と、“妹”が遺した店の魂
その2つが重なった時
カフェは奇跡の復活を遂げました
“少女”は笑顔で言いました
「ありがとっ!優しいおねえさん!」
“姉”は少し照れたように顔を背けます
「ごらん、ルティアナ…… 新たに創生せし
このお店を……」
そして小さく続けました
「なんて……美しい……」
それが“姉”の最後の言葉でした
気付けば、その姿はどこにもありません
不思議なことに…
人々は“姉”のことを思い出せなくなっていました
誰が店を救ったのか
名前すら分からないのです
“姉”は店を守るため、自分の財産だけでなく
自分という存在そのものまで使い果たして
消えてしまいました
帳簿にも残らない、記録にも残らない
誰の記憶にも残らない
けれど、新しくなったカフェのレジの横には
1枚の領収書だけが残されていました

宛名は白紙、発行者も不明
それでも誰も捨てようとはしませんでした
その領収書だけが知っていたからです
この店は誰かが守ったのだと
誰も名前を知らない、誰も思い出せない
それでも確かに存在した“救世主”が救った
そのお店の名は――「アストルティア」
それは“父親”の悲願だった
「姉妹で手を取り合いなさい」
が形になった瞬間だったのかもしれません
傲慢で自己中心的
良いところなどほとんどなかった“姉”
多くの人は嫌いな存在だったと思います
それでも私は、この名もなき“救世主”の存在を
忘れたくありません

ユーマグラムの冒険前に振り返るひとつの
物語でした
最後までありがとうございました