(以下バージョン7.4までのネタバレがあります。)
ここまで(1)(2)ではゲーム内の根拠をもとに世界球根に関する推測をしてきましたが、
ここからはゲーム外の知識も援用して世界球根について考えてみたいと思います。
「世界球根」は、表現的・内容的に「世界霊魂」を参照している可能性はあるでしょうか。
「世界霊魂」は古代ギリシアの哲学者プラトンの著作『ティマイオス』などで言われる概念で、
白澤社の『ティマイオス/クリティアス』p.40 にこう書かれています。
「神は、この宇宙を知性によって知られるもののうちでもっとも立派であらゆる点で完全なものに似せようと欲し、
自分自身のうちに本来自分と同類であるすべての生きものを含んでいるような、一個の目に見える生きものとして、この宇宙を構築したのである。」
短く言い換えると、〝全ての人間に内在する単一の魂がある〟とする考えのことです。
バージョン7.4のストーリーでは、あらゆるキュロン人の無意識下に世界球根の意思が介在していると説明があり、
同著p.40 で「神は(中略)知性を魂の中に、魂を身体の中に結びつけて万有を作った」ともあり、
どうも世界霊魂の話と似ているところがあるようなのです。
日誌(1)(2)の終盤に書いたように、世界球根が意思を伝達する対象と射程距離、
同じく知性を有する疑いのある時の円環(10周年記念クエスト)との関係が現時点では不明で、
この後世界球根がどう描かれていくかは7.5以降のふたを開けてみないとわかりません。
ところで世界霊魂の考えは古代ギリシアのプラトン以降の時代も続いていきます。
15世紀イタリアではマルシリオ・フィチーノがプラトンの著作をラテン語訳したことで、世界霊魂について書かれた『ティマイオス』が多くの人に読まれることになります。
錬金術や魔術にも世界霊魂の考えは浸透していき「一は全。全は一」(万物は一つにつながっていてまるで単一の生命体であるかのようで、「一」と「全」は照応関係にある)という概念に関連付けされていくようです。
心理学者・精神科医のユングの20世紀半ばの著作『心理学と錬金術』などでも世界霊魂の概念は錬金術の文脈でたびたび登場しています。
ただしどの時代や地域の世界霊魂も、基本的にプラトン主義の伝統の中で論じられているので、
その骨格となるプラトンの世界霊魂を知っておくことで後の時代の世界霊魂の議論も理解しやすくなると思います。
プラトンが論じる世界霊魂の要点を、彼の著作『ティマイオス』『法律』『ピレボス』で述べられているものを抜き出してみます。
これらを世界球根と比べると、現時点での似ている点や違い、不明点がわかると思います。
・全ての人は世界霊魂でつながっている
・世界霊魂は神(デミウルゴス)が作った
・宇宙は知性(を授けられた魂)を持っている
・世界霊魂は完全に合理的で、善である
・ある人のおこないが、他の人を活気づけたりより良い方向へ導く
・人の魂は世界霊魂から派生していない
・理解可能な世界と感覚的な世界との間の仲介者として世界霊魂が役立つ
また、意味のある偶然の一致(共時性)の観点では次のような主張もあります。
・世界霊魂がみずからの意思を伝達するために、似たような事象が続いて起きる「連続性としての共時性」を引き起こすことがある
(この文章を書くのに、Oxford University Press 『World Soul : A History』、人文書院『世界に宿る魂』、三元社『イタリア・ルネサンスの霊魂論』などを参照しました。)
おわり