竜術士……いいや、大魔王ボンゾルフだ。
さて、先日は魔界……いいや、愚者に満ちる「愚界」の戦乱を平定し、
大魔王の戴冠の儀を終えたわけだが。
オレはこの世界に満ちる愚者たちを、来たるべき大魔瘴期から救わねばならん。
自らを救うこともできぬ愚かなる魔族どもを救うのだ。
そのためには……
……魔瘴の元凶、大いなる闇の根源を討つしかないことは道理であろう。
かくして大魔王となったオレは、アストルティアの者どもも召集し、
闇の根源が眠るジャゴヌバ神殿へと足を踏み入れ……
遂に異界滅神ジャゴヌバと邂逅することができた。
しかし、オレたちの前には暴虐の邪神ダビヤガが立ちはだかった。
しかし……
……邪神とは、この程度か。
神でさえ、オレを満足させてくれぬのか。
嗚呼、愚かなり!
その旅路の傍ら、オレはナドラガンドにも赴いた。
魔瘴に満ちているのを感じ取ったからだ。
そこには魔瘴魂ナドラグルが存在していた。
竜の血族として、竜にまつわる因果は全て断ち切っておかねばならぬがゆえ、
オレの手で滅することとした。
結果は言うまでもない。
ナドラガなど、オレが一度、竜の力で負かした相手……
オレが愛するナドラガンドにも、これで真の平和が訪れた。
その後も、女神ルティアナと異界滅神ジャゴヌバを巡る戦いが続いていた。
それは魔界のみならず、アストルティアを巻き込んでいき……
……やがて、邪神が次々に目覚めていったわけだが。
オレが次に対峙したのは、禁忌の邪神ヤファギル……
……しかし、嗚呼、愚かなり!!
大地の支配者たるオレには到底及ばなかった。
何が禁忌の術かッ!
竜化の術、ドラゴラムの方が、よほど禁忌の術なのではないか?
この程度か……
……楽しませてくれぬが、まだ邪神は存在していた。
次なる敵は、嘲弄の邪神ピュージュ……
……しかし、嗚呼、哀れなり!!!
ふざけた戦いをして、何故、オレに勝利できると思うたか!
貴様の司る「嘲弄」こそが、貴様の敗因だ。
すなわち。
貴様は嘲弄の邪神として生を受けた時点で、人生の敗北が確定していたのだ!!
嗚呼、なんと悲しきことよ!!
かくして、邪神どもを討ち果たしたわけだが。
目覚めたばかりの女神ルティアナは、
邪神どもを取り込んで力を得た異界滅神ジャゴヌバを前に敗北した。
嗚呼……
…………嗚呼!!!
なんと…………
………………なんと愚かなことかッ!!!!
女神でさえ、この体たらく!
この幾万年の間、世の歴史において、神は人を信じ、人は神を信じてきた。
その信頼が成した事こそが女神の復活だったッ!
それなのに!
背負った願いを、受け継いだ希望を、かの女神は全てッ!!
大いなる闇の根源が放った滅びの槍を前に、全て、全て捨て去ったというのかッ!!!
嗚呼、哀れなり!!!
オレはもはや神々など信じぬ。
オレが信じるのは、オレだけだ。
もしかすると、この結末はオレが神を信じすぎたことが原因かもしれない。
他者に依存しすぎていた、そのような自覚は無いが、
自覚が無くともそうであったという事実がこの結果に表れている。
嗚呼……オレも哀れなる存在。
愚者だというのか。
……いいや。
愚者は、賢者よりも学ぶことができる。
そうだ。
いつだって、そうだった。
オレはかつて、戦士だった。
戦士だったが、魔法の道を学び、やがてついに竜の力を解放するに至った。
オレは今、竜術士として、人ではなく竜の足でこの大地を踏みしめている。
オレをここに至らしめたものは何だった?
オレをここまで動かしたものは何だった?
……そうだった。
忘れていた。
その力は……希望だ。
愚かなれど、希望ある限り、オレたちは歩める。
歩み続けられる。
オレたちが歩むべき道は、今、一つに決まった。
突き進むしかない。
全てを。
オレたちが歩んできた、全ての道を。
決して、無駄にしないために。
この大地を、希望と共に、ただひたすらに歩め。