画面の向こうで、ピンクのツインテールが軽やかに揺れた。
「みんなー、今日も討伐ありがとでしたっ☆ また明日もよろしくねー!」
キーボードを叩き込み、エンターキーを静かに押し込む。
画面内の可憐なエルフ女子――『ミルフィ』が両手を振る愛らしいしぐさを確認したあと、デスクの前に座る三十路のシステムエンジニア、佐藤健一(34)は深く息を吐き出した。冷めきった缶コーヒーをあおる。「……ふう。今日のノルマ、日課討伐と週替わり終わり」
呟いた声は、深夜のワンルームに低く響く野太い男の声だった。
健一がプレイしているのは、国民的オンラインRPG
『ドラゴンクエスト10』
そこで彼が操るキャラクター「ミルフィ」は、サーバー内でもそこそこ名の知れた人気プレイヤーだ。淡い桜色の髪に、透き通るような白い肌、尖った長い耳。そして何より、バザーで数百万ゴールドを投じて仕立て上げた純白のフリルドレスを完璧に着こなしている。
いわゆる――「エルおじ(エル子の中身がおじさん)」。
健一にネカマ(ネットオカマ)で誰かを騙して貢がせようという悪意はない。ただ純粋に、仕事で疲れ果てた深夜、画面の中に「最高に可愛い女の子」が存在し、それが自分の指先で愛らしく動いてくれるという癒やしを求めた結果だった。仕草の可愛さ、立ち振る舞いの徹底、チャットの語尾に添える「☆」や絵文字。それはもはや、健一にとっては職人芸の域に達したプロ意識の結晶である。
『ミルフィちゃん、このあとエンドコンテンツのボス行かない?』
チームチャットに飛んできたのは、チームリーダーを務める重戦士系オーガ男子「バレット」からの誘いだった。
バレットの中身はおそらく二十代の若者。いつも前線で敵の攻撃を身代わりで防ぎ、ミルフィを守ることに命をかけている、頼もしくも暑苦しい相棒だ。
「……明日は朝から客先プレゼンなんだよなぁ」
健一は頭を掻いた。だが、画面の中のバレットは熱心に「お願い!」の土下座しぐさを連発している。ここで無下に断るのは、可憐なエル子・ミルフィのロールプレイに反する。
健一はキーボードの指先を滑らせた。
『わぁ、バレットくんありがとー! でもね、明日は朝からリアルの学校の講義(※客先打ち合わせ)が早くて……今日はおねむの時間なんだぁ>< ごめんねっ!』
『そっか! 大学生は課題とか大変だもんな。無理しないで早く寝てね! おやすみ、ミルフィちゃん!』
『うんっ、ありがと! バレットくんもおやすみなさいー☆』
よし、完璧だ。女子大生設定に破綻はない。
健一は満足げに頷き、ログアウトのコマンドを押そうとした。
その瞬間。部屋の蛍光灯がパチパチと激しく明滅した。
「……え、停電?」
PCのモニターが眩い白光を放ち、部屋中を埋め尽くす。
耳元で、聞いたこともない澄んだシステム音が響いた。
《プレイヤーIDの照合を完了しました》
《魂の転移シーケンスを開始します――アストルティアへようこそ》
「は……? なに、これ……」
体が浮き上がるような強烈な浮遊感。吸い込まれる意識の中で、健一の視界は完全に真っ白になった。
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Geminiに構想だけ伝えたら勝手に書いてくれましたw