アロハな魔法:花咲く水着と小さな相棒
太陽の光が降り注ぐアストルティアの海辺。
白い砂が足元でさらさらとこぼれ、コバルトブルーの海がまばゆく広がっている。
今日の私は、いつもの冒険者の姿ではない。
水色を基調に花の模様が散りばめられた「お花のパーカー水着」。フードには可憐な花飾りが揺れている。
思わず鏡に映る自分に、ふふっと微笑んだ。
こんな軽やかな装いは久しぶり。まるで心にも、そよ風が吹き抜けたようだ。
「どうかな、モコ?」
足元では、小さな相棒・モコがちょこんと座ってこちらを見上げている。
私の声に、こてんと首を傾げる仕草があまりにも可愛くて、しゃがんで撫でてしまった。
「ふふ、似合ってるってことね」
モコの尻尾がふわふわと揺れる。まるで同意するように。
周囲には背の高いヤシの木、大きな葉を茂らせる植物、遠くに見える三角屋根の建物。波の音が心地よく、まるで夢の中にいるようだった。
「今日は、のんびりしようか、モコ」
私は空に向かって両腕を大きく伸ばす。青空はどこまでも澄みわたり、白い雲がゆっくりと流れている。
戦いも、迷宮も、今日はお休み。
ただ、心のままに過ごす一日。
この水着、ただ可愛いだけじゃない。
フード付きだから日差し除けにもなるし、花のモチーフが気持ちを明るくしてくれる。まるで「リゾートの魔法」をかけられたようだ。
モコが、私の足元にぴょこぴょことついてくる。
その姿が愛らしくて、思わず笑ってしまう。パーカーの裾が、風にふわりと揺れる。
「お出かけしようか、海のほうまで」
海辺に近づくにつれて、潮風が頬を優しく撫でていく。
ほんのり塩の香り、でもそれだけじゃない。懐かしいような、心がゆるむような、不思議なにおい。これが、アストルティアの風だ。
水面には太陽の光がきらめいていた。
エメラルドグリーンからコバルトブルーへのグラデーション。その美しさは、何度見ても息をのむ。
私は砂浜に腰を下ろす。モコも隣にちょこんと座った。
波の音、風の音、鳥のさえずり。全部がBGMみたいに心に染み込む。
(ここに来てよかった…)
パーカーのフードに触れれば、花飾りが指先に優しい感触を伝える。
この服がくれる安心感。それは、冒険の疲れを癒す魔法のようだった。
「明日からはまた、戦いがあるかもしれない。でも、今日だけは…」
私は小さく呟き、モコと一緒に波を見つめる。
空は、青く高く。
風は、優しく。
この瞬間が、永遠であればいいと思った。
花咲く水着が私にくれたもの。
それは、おしゃれでも可愛さでもなく、心に咲いた、やすらぎのひとときだったのかもしれない。