「……よし、これで……137だ」
使い古した鞭のグリップを握り直し、俺は短く息を吐いた。
肺に流れ込むのは、魔界の淀んだ空気と、戦いの余韻である焦げ付いた魔力の匂い。鼻を突くその刺激が、かえって心地よかった。
隣では、相棒のキラーパンサーが「グルル……」と喉を鳴らし、俺の脚に頭を擦りつけてくる。金色の毛並みは返り血と埃で汚れているが、その体温は驚くほど熱い。指先を潜り込ませると、悴んでいた指の節々が、生命の拍動によってじんわりと解けていくのがわかった。
「お前も、強くなったな」
レベル137。
かつては遠い空の向こうにある数字だと思っていた。
思い返せば、まもの使いとして歩み始めた頃は、魔物との距離感すら掴めなかった。ただ闇雲に鞭を振り回し、モンスターの殺気に気圧されて、冷や汗で背中を濡らしていたあの日。
だが今は違う。視界が研ぎ澄まされ、風の動き一つで相手の次の一手が読める。耳を澄ませば、遠くでうごめく魔物の足音も、森のさざめきのように明確な意味を持って聞こえてくる。
「137か……。これでまた一つ、あいつらを守る力が手に入ったわけだ」
俺が強くなることは、俺一人の自己満足じゃない。
パーティーを組む仲間たちの盾となり、共に戦う魔物たちの信頼に応えるための、重くて温かい「責任」の重みだ。
胸の奥で、達成感という名の小さな火が灯り、それが全身の血を巡っていく。皮膚を刺すような魔界の寒風も、今の俺にはちょうどいい。
「さあ、帰るぞ。アズランの宿屋で、とびきりの肉を食わせてやる」
俺がそう言うと、相棒は嬉しそうに吠えた。
137という到達点は、さらなる高みへの通過点に過ぎない。
俺たちの旅は、この温もりが続く限り、どこまでも続いていく。
「次は138だな。……行くか」
雪解けを待つ冬の芽のように、内側に確かな力を秘めたまま、俺は次の戦場へと歩き出した。
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