「……届いた、のか」
乾いた唇から、独り言がこぼれた。
一月二十一日。カレンダーの上では「大寒」を過ぎたばかりの、もっとも深い冬。
アストルティアの空もまた、鈍色の雲が低く垂れ込め、隙間から刺すような寒風が吹き抜けていく。
俺は、まもの使いの証である、少し使い古した革のグローブをはめ直した。
手のひらに伝わる、しっとりとした革の質感と、内側に残る自分の体温。
つい先ほど、最後の一撃を叩き込んだ瞬間、脳裏に鳴り響いたあの「音」——魂の枠が一段階広がるような、透明で重厚な鐘の音。
レベル138。
その数字が、俺の胸の中にストンと落ちてきた。
「おい、相棒。聞こえたか? 今の音」
足元で、共に修羅場をくぐり抜けてきたドラゴンキッズが、鼻先を俺の膝に押し当ててくる。
ゴツゴツとした鱗の感触は、氷のように冷たいはずなのに、その奥からは溶岩のような熱い生命力が脈打っていた。
「キュイッ!」という短い鳴き声。それは祝福であり、同時に「もっと先へ行こうぜ」という急かしのようにも聞こえた。
「わかってるよ。……けどさ、少しだけ浸らせてくれ」
俺は地面に腰を下ろした。
冬の枯れ草が、ズボンの上からチクチクと肌を刺す。
鼻腔を抜けるのは、冬特有の、すべてが凍りついたような無機質な匂い。
だが、レベルが上がった今の俺の感覚は、驚くほど研ぎ澄まされていた。
遠くの山で雪が崩れる微かな音。
枯れ木の枝先で、春を待つ**冬木の芽**が、固い殻の中で微かに震える気配。
そして、自分の中に新しく流れ込んできた、淀みのない膨大な魔力の奔流。
「137から138。たった『1』の差だけどな……。見える景色が、全然違うんだ」
俺は自分の拳を見つめた。
レベル1の頃、ただスライムを追いかけていた頃の、あの無力で、けれど希望に満ちていた感覚。
それが、138という重みにまで積み上がった。
この「138」という数字には、今まで倒してきた魔物の数、共に戦った仲間の笑顔、そして、ボロボロになりながら歩んできた道、そのすべてが詰まっている。
「……熱いな」
不意に、目頭が熱くなるのを感じた。
これは寒さのせいじゃない。
自分の限界を一つ超えたという、まじりけのない「自負」が、内側から熱を帯びて溢れ出そうとしているのだ。
悴んでいた指先が、今は内側からの熱気で微かに震えている。
「なあ、お前。俺たちはどこまで行けると思う?」
相棒の頭を撫でると、乾いた鱗の音が心地よく響く。
まもの使いという生き方は、孤独じゃない。
魔物と、そして自分自身と、魂を削り合って高みを目指す旅だ。
「よし……行こう。宿に戻ったら、お前には特上の骨付き肉、俺には熱い蕪のスープだ」
立ち上がると、一月の鋭い風が頬を叩いた。
だが、もう寒くはない。
138の力を宿した俺の体は、この冬の静寂を切り裂いて進むための、強靭な火を灯しているのだから。
「さあ、相棒。次は……139の景色を見に行こうぜ」
一歩踏み出した足元で、霜柱が小気味よい音を立てて砕けた。
その響きは、新しい季節の始まりを告げる合図のように、どこまでも澄み渡っていた。
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こんばんは
おつかれさまです
コントローラーがまた壊れた><