かわいいピンクのスイーツゾーンを訪れた瞬間、鼻をくすぐったのは、バニラの柔らかな甘い匂い。
空は淡い桃色に溶け、まるでお菓子の城を縁取る雪は、真っ白な砂糖細工のよう。見上げるほど大きなイチゴの赤が、冷たい空気の中で鮮やかに燃えている。
「ふふ、今年もこの季節が来たのね」
私は、新しく手に入れた**バタフライチュチュ**の裾を軽くつまみ、くるりと回った。背中で揺れるエメラルドグリーンの羽が、城の光を反射してキラキラと輝く。シルクのような滑らかな生地が肌に触れ、胸が高鳴るのを感じた。
「ミローレ! 今年こそ、アストルティア・プリンセスへの道、案内してくれるかしら?」
城の入り口で、いつものようにスマートに立つミローレが、羽のついた帽子を少し持ち上げて微笑む。
「もちろんですとも、旅のプリンセス。第13回アストルティア・プリンセスコンテスト、そして第14回クイーン総選挙。この城は今、世界で一番熱い戦いの舞台なのですから」
彼の声は、ベルのように清らかに響く。ミローレの背後では、クイーン候補たちが華やかなムービーの中で微笑んでいた。彼女たちの声、彼女たちの決意。それが空気を通じて、ビリビリとした緊張感と、それ以上の高揚感となって伝わってくる。
私は、愛用の写真機を構えた。ファインダー越しに覗く世界は、バレンタインの魔法にかかっている。雪に覆われた白い木々、甘い香りの湯気を立てるフォンテヌの泉。そして、隣で共に強敵を倒した戦友(フレンド)の頼もしい背中。
「見て、この光……。雪景色にこのバタフライのグリーンが、驚くほど映えるわ」
シャッターを切るたび、指先に冷たい金属の感触と、思い出が刻まれる確かな重みを感じる。今回のプリンセスコンテストは、仲間と一緒に写った写真も応募できる。孤独な戦いではなく、誰かと分かち合った「楽しさ」が、今年のプリンセスの称号に繋がるのだ。
「私、書いてみる。誰にも支配されない、この自由な空の下で、私たちがどれだけ笑い、どれだけ戦ったか。その証を……」
私は、バレンタイン会場の甘い空気を思い切り吸い込んだ。冷たい風の中に混ざる、温かなバニラの香り。それは、私たちがこのアストルティアという世界で、確かに「生きている」という、最高に甘美な証明だった。