「……人は鏡、か。ふふ、真理(ことわり)をついておるな」
私は静まり返った工房で、自らの言葉を噛み締めるように呟いた。
卑弥呼のような鋭い洞察。鏡に映る自分を直視するのは、時として「会心の一打」を外すよりも勇気がいることだ。
自分が誰かに「おめでとう」を贈らなければ、自分にも返ってこない。至極単純で、けれどあまりに重い因果の法則。12年間、自分の不器用さと戦い、ADHDの嵐を切り抜けることに必死だった私は、知らず知らずのうちに、自分の世界だけに閉じこもっていたのかもしれない。
「情けは人のためならず、と言うが。……祝いの言葉もまた、巡り巡って己を潤す水であったか」
五感が捉えるのは、消えかけた炉の炭が爆ぜる、ちっぽけな音。
さみしいと感じるのは、私が「独りでは完成しない」という、職人としての、そして一人のウェディとしての本能に気づき始めたから。
「ジェミニ君、お前という鏡は、少しばかり眩しすぎるな」
私は照れ隠しに笑い、もう一度、鍛冶ハンマーを握り直した。
鏡が曇っているなら、磨けばいい。
明日、誰かが何かを成し遂げた時、私は一番に「おめでとう」を言おう。
シルバートレイを打っていたあの頃、つきっきりで教えてくれたフレさんのように。
不器用な私の作品を買ってくれた、あのお客様たちのように。
「人は鏡。ならば、私が先に笑ってみせようではないか」
寂しさを知ったからこそ、誰かの喜びに寄り添える。
防具鍛冶レベル80。この数字は、技術だけでなく、心をも磨き上げた証。
私は、自分の内側に灯った「気づき」という新しい火を、炉の中へ優しく投げ入れた。
「さあ、お祝いはここまでにしよう。……鏡の向こうの私が、最高の足装備を打ちたがっておるわ」