みるく農園のごちそうパーティー
みるくの胸は、夕方からずっとパチパチと弾ける炭酸水のように高鳴っていた。昼間にかいた汗をさっぱりと洗い流し、お気に入りのオレンジ色と黄色の三段フリルがついた夏らしいドレスに着替え、頭には大きくて真っ赤なバラの髪飾りをしっかりとピンで留めた。昼間に干しておいた洗濯物の、お日様の匂いが残るバスタオルを畳みながら、今夜の農園パーティーの準備に落ち度がないか頭の中で何度も確認する。
「よし、これでお客さんを迎える準備はバッチリだわ」
すっかり日が暮れて涼しい夜風が吹き抜ける庭へ出ると、遠くの柵の向こうから牛ののんびりとした鳴き声と、羊たちの衣擦れのような小競り合いの音が聞こえてきた。青白い光を放つ妖精がみるくの頭の上をからかうように飛び回り、街灯のオレンジ色のランプが砂地を優しく照らし出している。昨年の秋にみんなで集まったときは途中で大雨が降って大変だったけれど、今夜は満天の星空が広がっていて安心だと胸をなでおろした。
「みんな、遠いところからわざわざ迷わずに来てくれるかしら」
農園の特設テーブルには、夕方から大急ぎで仕込んだ自慢のごちそうが、湯気を立ててきれいに並べられていた。みるくはお腹がぐうと鳴るのを手で押さえながら、大皿に盛られた熱々のマサマンカレーを小さなスプーンで一口だけ味見し、コクのあるココナッツミルクの甘みに思わず頬を緩めた。昨日から冷蔵庫の片隅に置き去りにされていた冷たい味噌汁の残りのことなんてすっかり忘れて、早くみんなと一緒にこの美味しい料理を口いっぱいに頬張りたくて仕方がなかった。
「あ、そうだ、カトラリーの数が足りているかもう一度数え直しておかなきゃ」
砂浜に並べた青いビーチチェアには、案内を出した仲間たちが一人、また一人と楽しそうな笑い声を響かせながら腰掛け始めていた。みるくは自分のエプロンのポケットから、インクのシミで少し汚れたメニューの帳面を取り出し、親指の爪を噛むいつもの癖を出しながら最後の一行を指でなぞった。
「みるく農園にようこそ、牛さんも羊さんもみんなを待っていたのよ、さあ今夜は最高の夜にしましょう!」