【鑑定】元社長へたれゲーマーみるく、誰も見向きもしなかった「ハズレ素材」の真価を暴いてバザー相場をひっくり返す ~社畜たちよ、これが本当の資産運用だ~
胃の奥がじんわりと熱くなり、みるくは湯気の消えかけた湯呑みを両手で包み込んだ。パソコンの画面には今日のバザー価格が並び、多くの冒険者が値下げ合戦を繰り広げている。昨日まとめて買ってきた食パンをトースターで軽く焼き、マーガリンを塗って朝食を済ませたばかりの六畳間には、ほのかな小麦の香りがまだ残っていた。誰もが値上がりする素材ばかりを追いかけている光景を見つめながら、元社長だった頃に「利益は人が見向きもしない場所に眠っている」と社員へ話していた日のことを思い出し、小さく口元を緩める。
「やっぱり、誰も見ていないな。」
そう呟くと、みるくは配信用マイクのスイッチを入れた。画面の向こうには、今日も多くの視聴者が集まり、「おすすめ素材は何ですか」「今買うなら何がいいですか」と次々にコメントを書き込んでいる。みるくは慌てることなく価格表をゆっくり眺め、誰も気に留めない泥岩石やきれいな枝、宵闇のジェルなどの推移を一つひとつ確認していく。その数字は一見すると地味で面白味もないが、長年会社の決算書を読み続けてきた目には、相場のわずかな歪みがはっきりと浮かび上がって見えていた。
「人気素材だけを追いかけても、利益は薄くなるんです。本当に大切なのは、『みんながいらないと思っている物』を観察し続けることですよ。」
コメント欄が一気に流れ始め、「なるほど」「そんな見方があったのか」と驚きの声が次々と並ぶ。みるくは机の横に置いたメモ帳へ静かに数字を書き込みながら、相場は感情で動き、利益は冷静さから生まれることを丁寧に説明していく。派手な一攫千金よりも、小さな利益を何度も積み重ねるほうが最後には大きな資産になるという考え方は、会社経営もバザーも変わらないと語るその口調には、長年組織を率いてきた人間だけが持つ落ち着きがあった。
「安いから買うんじゃありません。価値より安く売られているから買うんです。」
その一言で配信の空気が変わった。視聴者たちは今まで見過ごしていた素材を検索し始め、静かだったバザー価格が少しずつ動き出していく。みるくは慌てて買い占めることも、高値をあおることもせず、湯呑みのお茶を一口飲んでから静かに微笑んだ。誰かが不要だと決めつけた物の中に価値を見つけることこそが、本当の鑑定士の仕事であり、経営者として積み重ねてきた経験は、今日もアストルティアの市場で確かな利益へと姿を変えていた。