僕って痛い人でしゅか
人魚の涙を盗むため、みるくは赤紫色の大地を歩いていた。本命は黒い海藻の衣をまとった「わかめ王子・強」であり、盗賊たちの間では立派な金策相手として知られている。ところが遠くに赤い背中と大きな口を見つけたみるくは、それを見慣れた「わにバーン」だと思い込み、迷わず近づいた。白い髪を揺らして敵へ接触した瞬間、画面には「ビッグファング」という名前が表示された。
「あなた、わにバーンではなかったのでしゅか。ずいぶん口の大きな親戚でしゅね。」
一匹なら間違いで済んだが、みるくは仲間を呼ぶ特技を使い、ビッグファングを五匹まで増やしてしまった。大きな牙と口が画面の奥まで並び、盗み金策の現場は、突然ワニ型魔物の社員総会になった。青いローブを着たみるくは両手を高く上げ、旅芸人の音符や仲間の攻撃が飛び交う中で、呼んだ数をもう一度数えた。二、三、四、五と確認するたび、どの一匹も人魚の涙を持っていない事実だけが鮮明になった。
「五匹も呼んでから人違いに気づく僕って、痛い人でしゅか。そもそも人ではなくワニ違いでしゅけど。」
戦闘を終えたみるくは、薄桃色の半袖シャツへ着替え、台所で冷やしうどんを作った。大根おろし、刻んだ大葉、揚げ玉、半分に切ったミニトマトを載せ、檸檬を搾ると、さっぱりした匂いが広がった。注意欠陥多動性障害の頭は「人魚の涙」という目的を覚えていても、目の前で動く赤い背中を見つけると、確認より先に指を動かすことがある。文字を読むのに時間がかかる目へ、戦闘開始後に敵の名前を見せられても、仲間呼びの指はすでに営業を始めていた。
「注文したのは、わかめ王子・強でしゅ。ビッグファング五名様の宴会予約ではありましぇん。」
うどんを食べながら画像を見比べると、わにバーンは赤い体に紫色のたてがみを持ち、ビッグファングも大きな口と赤い背びれを持っていた。並べれば違いは分かるが、広いフィールドで動いている背中だけを見れば、間違えても不思議ではない。さらに本命のわかめ王子・強は、ワニの親戚ですらなく、黒い海藻を引きずった魔法使いのような姿をしている。みるくは箸を止め、金策帳の余白へ三匹の特徴を書き分けた。
「ワニを見つけても呼ばない。黒いわかめを見つけてから盗む。金策とは、まず鮮魚売り場と爬虫類売り場を区別することでしゅ。」
食後、みるくは冷やしうどんの器を洗い、散らかった机へ三枚の写真を並べた。魔塔ではブーネイに何度も倒され、気分転換の盗み金策では別の敵を五匹呼んだが、どちらも後から笑える材料として残っている。間違えない人より、間違えた後で見分け方を作れる人のほうが、次の一回には強くなれる。みるくは金策帳へ大きな丸を描き、最後に自分への判定を書いた。
「僕は痛い人ではありましぇん。人魚の涙を盗みに来て、ワニの大家族を開催した、少し忙しい作家でしゅ。」