リーネさん、今日はどうしたのでしゅか
ヴェリナード城下町のアクセサリー屋で、みるくは桃色のロングコートの襟を整え、合成屋リーネの前へ立った。肩には小さなクマのぬいぐるみを載せ、黒い編み上げブーツのつま先を、落ち着かない様子で二度こすり合わせている。手元にはアンドレアルとの戦いや破片集めを経て作った紫竜の煌玉があり、今日は最後の合成に挑む日だった。リーネはいつもの笑顔でアクセサリーを受け取ると、何でもない仕事のように金槌を持ち上げた。
「お願いしますでしゅ。できれば、今日だけは商売人ではなく女神になってくだしゃい。」
現実の部屋では、訪問看護師が帰ったあとのテーブルに、肉じゃがとほうれん草のおひたしが並んでいた。ジャガイモにはだしが染み、ニンジンは少し大きく切りすぎていたが、箸で持つと崩れそうなほど柔らかい。みるくは薄紫色の部屋着の袖をまくり、炊きたてのご飯を一口食べてから、合成結果を待った。鍋には肉じゃがが明日の分まで残っているが、アクセサリーの破片には明日の保証がない。
「ジャガイモは煮れば柔らかくなりましゅが、リーネさんは何度通っても手加減を覚えないのでしゅ。」
金槌が軽い音を立て、紫竜の煌玉に望んでいた最大HPの効果が付いた。何度見直しても数値は変わらず、ついに理論値が完成していた。最大HPを大きく伸ばす第三世代アクセサリーが、これ以上ないところまで育ったのである。みるくはコントローラーを置き、肉じゃがのニンジンを一つ食べてから、もう一度画面を確認した。
「リーネさん、今日は本物でしゅか。後ろから店長さんに操作されていましぇんか。」
しかし、本日の仕事はそれだけでは終わらなかった。次に差し出した幻界王の首かざりにも最大HPの効果がそろい、こちらまで理論値になった。紫竜の煌玉と幻界王の首かざり、二つのHP装備が同じ日に完成する出来事は、魔塔で所持金を半分ずつ失った日々への返金のようだった。リーネは得意そうに胸を張り、みるくはカウンターの向こうへ疑い深い視線を送った。
「二つとも理論値でしゅ。もしかして、明日から三か月分の失敗を先に帳簿へ付けていましぇんか。」
みるくは記念写真を撮り、桃色のコート姿でリーネの店の前へ立った。棚には宝石やアクセサリーが整然と並び、壁のランプはいつもと同じ色で光っているのに、今日は店全体が優良店に見えた。魔塔ではレベル六十五でもブーネイに床へ転がされ、盗み金策ではビッグファングを五匹呼んだが、育ててきた装備は裏切らず数字になった。みるくは肩のクマを指で撫で、画面の中のリーネへ深く頭を下げた。
「リーネさん、ありがとうでしゅ。今日のことは忘れましぇんから、次回も同じ担当者でお願いしましゅ♡」