片手剣と盾と、レジェンドホース五頭分
みるくは赤い上着と黒い短パンに着替え、片手剣を腰に差し、丸い盾を左腕に固定した。以前の装備では攻撃、回復、敵との距離、残り時間まで同時に考えなければならず、注意が一つ隣へ移るたびに、最初に考えていたことが机の上の眼鏡のように消えたからである。現実の机にも眼鏡は見当たらず、冷めた麦茶の横には鮭おにぎりの包み紙と、半分だけ食べた卵焼きが残っていた。
「片手剣と盾なら、考えることが少し減るでしゅ。攻撃して、危なくなったら盾。これでいくのでしゅ」
不思議の魔塔では、太った黄色い竜が大きな腹を突き出して待っていた。その腹は、夕飯にカレーを三杯食べたあと、冷蔵庫で見つけたプリンまで平らげた者の腹に見えたが、みるくに他人の食生活を注意する資格はなかった。さっき食べた鮭おにぎりの海苔が前歯についているかもしれないと思い、舌で確かめている間に竜が腕を振り上げた。
「食後の歯磨きまで待てないのでしゅか!」
みるくは盾を構え、攻撃を受け止めてから片手剣を振った。盾があると、回復するか逃げるかを毎回二択で悩まずに済み、頭の中の会議に出席する人数が三十人から五人ほどに減った。それでも竜の腹、光る柱、床の模様、画面の端を飛ぶ妖精が順番に気になり、レジェンドホースを呼ぶべき場面で、なぜ馬が塔の中を走れるのか真剣に考えてしまった。
「いけません。今は建築基準法を調べている場合ではないのでしゅ」
一頭目のレジェンドホースを出したとき、みるくは得意になって麦茶を一口飲んだ。二頭目を出したときには、室内干しの靴下が一枚だけ裏返しなのを見つけた。三頭目では卵焼きの残りをつまみ、四頭目では何頭まで出したか分からなくなり、指を一本ずつ立てて数え直した。五頭目を要求されると、みるくは赤い袖で口元を拭き、画面いっぱいの黄色い腹へ向かって叫んだ。
「五回も出すなんて、どんだけー!」
竜は答えず、しっぽを振り回した。みるくは盾で耐え、焦って別の技を選びそうになる右手をいったん膝へ置いた。それから「馬、五頭目、攻撃」と声に出し、一つずつ確かめて操作すると、最後のレジェンドホースが竜へ突進した。巨体が床へ倒れ、みるくは椅子から立ち上がったものの、足元の洗濯籠につまずき、盾の代わりに座布団を抱えて踏みとどまった。
四十階を突破すれば、レプリカード発行所が解放される。不思議のカードを複製できれば、別職業用のカードを同時に使い分けられ、これまで以上に冒険の準備が楽になる。注意が長く続かなくても、一度に考えることを減らし、声に出して確認し、失敗したら装備を変えればよい。みるくは冷めた卵焼きを口へ入れ、片手剣と盾を装備した自分の姿を見直した。
「なんとしても、あきらめるわけにはいかないのでしゅ。四十階さん、レプリカードを磨いて待っているのでしゅ!」