スイカに食べられる庭
みるくが新作庭具を置いた瞬間、庭は果物売り場になった。巨大なスイカを半分に切った形のソファは、赤い果肉を背もたれにし、黒い種を堂々と並べている。中央には黄色いスイカのクッションまで置かれ、夜になると頭上の小さな照明が甘そうに光った。黄色い服に桃色の帽子を合わせたみるくは、白いレッグウォーマーを整えながらソファの前に座った。
「かわいい。でも、これ、庭具でいいのかな」
フレンドが庭へ来ると、巨大なスイカの前で足を止めた。住宅村の石壁を背景に、果肉へ腰を下ろす光景は、どう見てもスイカに食べられかけている人だった。みるくは黄色いクッションを抱き、座り心地を確かめた。
「種を飛ばしたら、庭が全部スイカ畑になるかも」
「その前に、みるくが種として植えられてるよ」
「私、こんなに大きなスイカから生まれたの?」
「設定を勝手に増やさないで」
現実の机には、冷めたコーヒーと食べかけの塩せんべいが置かれていた。画面の中は夏らしく瑞々しいのに、みるくの口にあるのは醤油味だった。せめて本物のスイカも食べたいと思ったが、冷蔵庫には卵と梅干ししかない。
「この黄色いクッション、卵焼きにも見えてきた」
「空腹で庭具を見るのは禁止です」
「じゃあ、赤いところはマグロのお刺身」
「もう海鮮丼じゃん」
みるくは立ち上がり、今度はソファの横へ回った。外側は濃い緑色の縞模様で、後ろから見ると本物の巨大スイカにしか見えない。庭へ入ってきた人を驚かせるため、入口の正面へ置くことにした。
「ようこそ、みるくの家へ。まずスイカに飲み込まれてください」
「歓迎の方法が魔王なんよ」
「でも、かわいいでしょう?」
「悔しいけど、かわいい」
みるくはもう一度、黄色いスイカの前へ座った。庭具一つで、何もなかった石壁の前が夏の撮影場所になっている。インテリア大富豪を名乗るなら、季節だけでなく果物まで家具にするくらいで、ちょうどよかった。
「次はメロンのベッドが欲しいな」
「そのうち家がフルーツポンチになるよ」
「いいね。お客さんにはスプーンを持ってきてもらおう」
巨大なスイカは何も答えず、頭上の灯りだけを黄色く揺らした。みるくは記念写真を撮り、題名を「本日の収穫」にした。収穫されたのがスイカなのか、スイカに座らされたみるくなのかは、最後まで誰にも分からなかった。