朝顔の庭具はどこで売っていますか?
みるくは、桃色の朝顔が絡みついた大きな鉢を見た瞬間、自分の庭にも置きたくなった。黄色いキャミソールに桃色のチェック柄スカートを合わせ、白いロングブーツでイベント会場を端から端まで歩いたが、庭具屋の商品一覧には朝顔の「あ」の字もない。屋台から焼きとうもろこしの香ばしい匂いが流れてきて、お腹は鳴るのに、欲しい庭具だけが見つからなかった。
「この朝顔、どこで売ってるの?」
「うちでは花火と提灯しか扱ってないよ」
「では、隠し商品ですね?」
「どうしてそうなるんだい」
みるくは疑い深い目で店員の後ろにある木箱を見たが、中身は売れ残ったお面だった。念のため会場をもう一周し、橋の下や屋台の裏まで調べたものの、見つかったのは誰かが落とした綿あめの棒だけである。途中でラムネを買うと、ビー玉が瓶の口に引っかかり、みるくは五分も振った末にスカートへ中身をこぼした。
「朝顔も買えないし、ラムネにも嫌われたよ」
「みるくちゃん、庭具を探しているの?」
「そうなの。ピンクの花がいっぱい咲いていて、後ろに隠れれば、かくれんぼにも使えそうな鉢なの」
「そのスカートでは足が全部見えると思うけど」
「細かいことを言う人には、朝顔の種をあげません」
次にみるくは競売所へ走り、「朝顔」「あさがお」「アサガオ」「桃色の花」「棒に絡む植物」と、思いつく名前を片端から入力した。しかし画面に並ぶのは朝顔とは関係のない家具や素材ばかりで、最後には高価な釣りざおまで表示された。机の端には食べかけの塩むすびが置いてあり、海苔の匂いを嗅ぐたびに集中が切れ、入力欄へ「あさがおおにぎり」と打ち込んでしまった。
「そんな庭具、あるわけないだろ」
「でも、おにぎりを置ける朝顔の鉢なら便利でしょう?」
「庭で何を食べるつもりなんだ」
「塩むすびと焼きとうもろこし。それから、かき氷」
「植物より先に、みるくが育ちそうだな」
そのとき、通りかかったフレンドが、みるくの探している庭具は店売りではなく、別の方法で入手する品ではないかと教えてくれた。みるくは検索条件を外し、入手先を調べ直して、ようやく自分がイベント会場の店と競売所だけを何度も往復していたことに気づいた。朝から机に置いたままの麦茶はすっかりぬるくなり、白いブーツの中も歩き回った汗で蒸れていた。
「つまり、売っていない物を一時間も買おうとしていたの?」
「一時間ではありません。休憩を含めれば二時間です」
「悪化してるじゃないか」
「でも、屋台の場所は全部覚えました」
「朝顔については?」
「いまから覚えます」
みるくは無事に入手方法を確認すると、朝顔を置くため庭の一角を空けた。ところが鉢を設置してみると、思っていたよりずっと大きく、家の入口を半分ふさいでしまった。桃色の花は風に揺れ、葉から青い匂いが立ち、そばのかがり火がぱちぱちと音を立てている。
「きれい。苦労して探したかいがあったね」
「でも、家に入れないよ」
「朝顔の後ろを通れば?」
「スカートから足が全部見えるでしょう?」
「さっき細かいことを言うなって言ったよね」
みるくは鉢を少しだけ横へ動かし、満足そうに塩むすびを頬張った。庭具の名前より屋台の品ぞろえに詳しくなったが、桃色の朝顔は夕暮れの庭によく似合っていた。そして翌朝、みるくは別の家で青い朝顔を見つけ、また競売所へ向かって走り出した。