一億ゴールドへ帰ってきたみるく
みるくはピンク色のプリーツスカートに黄色いブラウスを合わせ、白いブーツの音を鳴らしながら、自慢のお菓子屋へ入った。店内にはハート形の看板、桃色のウサギのぬいぐるみ、色とりどりの飲み物が入った大きな瓶が並び、甘い苺の香りが漂っている。少し前までは新しい家具を見つけるたびに財布を開き、値札を確かめるより先に店員を呼んでいた。
「このウサギもください。あっちの椅子も、それから光るハートの看板もお願いします」
「みるくさん、ずいぶん景気がいいですね。今日は大商人のお買い物ですか」
「一度しかない人生だもの。ゴールドは使ってこそ輝くのよ」
ところがある晩、みるくが銀行の帳面を開くと、見慣れていた一億の数字が消えていた。机には食べかけの苺タルトと冷めたミルクティーがあり、床には買ったまま置き場所の決まらない小さな椅子が三脚も並んでいる。家具に囲まれた店内は申し分なくかわいかったが、みるくはスプーンをくわえたまま帳面を何度もめくった。
「一億ゴールドは、どこへ行ったの?」
「ハートの看板になりました。ウサギのぬいぐるみにもなりました。あと、座れないほど小さい椅子が十五脚あります」
「そんなには買ってないわよ。十四脚くらいよ」
翌朝から、みるくの一億奪還作戦が始まった。倉庫の素材を数え、相場を調べ、売れそうな品へ値札を付けるうちに、朝食のチーズトーストはすっかり冷えてしまった。それでも彼女は眠っていた鉱石やオーブを抱えて旅人バザーへ走り、売れ残れば値段を直し、郵便箱に売上金が届けば両手を上げた。
「売れた! 昨日拾った素材が三万ゴールドよ!」
「家具を買うときは三十万ゴールドを一秒で払っていましたよね」
「今は三万ゴールドの重みを味わっているの。余計なことを言うと、お昼のプリンは半分だからね」
一週間が過ぎ、一か月が過ぎても、ゴールドは都合よく空から降ってこなかった。みるくは冒険へ出て汗をかき、魔物から手に入れた素材を持ち帰り、夜には紫色の絨毯へ座って帳面をつけた。隣では桃色のウサギが笑っており、みるくはその丸い顔を見るたび、買った日の勢いを思い出して頬をかいた。
「使うのは、ほんの一瞬なのにね。貯めるのは、どうしてこんなに時間がかかるのかしら」
「だから一億ゴールドには、一億ゴールド分の思い出が詰まっているんですよ」
「いいことを言うわね。でも、このウサギを買ったことは後悔してないよ。かわいいもの」
そして八月六日、みるくは銀行の帳面を開いた。所持金と預金を合わせた数字は、百億ではなく、きちんと数え直して百三十八万でもなく、堂々たる一億三十八万二千百五十一ゴールドだった。みるくは椅子から飛び上がり、冷蔵庫に残してあった桃のケーキを皿へ載せると、仲間を店へ呼び集めた。
「一億に戻ったよ! 今日は私のおごりでケーキを食べよう!」
「おめでとうございます。ところで、広場に新作のぬいぐるみが入荷したそうですよ」
「見に行くだけなら無料よね」
みるくは財布を持って立ち上がったが、三歩進んだところで振り返り、帳面を金庫へしまった。それから一億ゴールドを残すため、財布には増えた分の三十八万二千百五十一ゴールドだけを入れた。仲間たちが笑うなか、みるくは桃のケーキを頬張り、今度こそ見るだけだと言いながら、誰よりも早く新作家具の店へ走っていった。
所持金+銀行
: 100,382,151 G