マイタウンに織姫が舞い降りた日
八月七日、みるくは自分のマイタウンで月遅れの七夕を楽しむことにした。今年は七夕の祭り会場がないため、大きな吹き流しや短冊を結んだ笹、柔らかな光を放つ行灯を、自分の手で庭へ設置したのである。今日のみるくが着ているのは浴衣ではなく、桃色の上衣と白い裳、鮮やかな赤い帯を組み合わせた織姫様の衣装だった。背中で大きく輪を描く白い飾りが夏風に揺れると、物語の中から本物の織姫が降りてきたように見えた。
「今年は会場がないなら、私が作ればいいのよ。織姫みるくの七夕まつり、ただいま開幕です!」
マイタウンの入り口には、桃色と紺色の巨大な吹き流しが並んでいた。金色の星がちりばめられた長い布は、青空から流れ落ちる天の川のように揺れ、その間を歩くだけで胸が弾んだ。みるくは紫色の扇を手に、吹き流しを一本ずつ見上げながら、自分で考えた配置を確かめていった。裾が行灯に触れそうな一本を見つけると、織姫の長い衣装を両手で持ち上げ、台座を少しだけ回した。
「うん、これなら写真にもきれいに入るわ。織姫様は飾りつけも自分で直します!」
赤い和傘を並べた休憩所には、涼しげな茶器や色とりどりの器を飾ってある。家の台所で握った梅のおにぎりと枝豆、冷たい麦茶も小さな卓へ運んできた。おにぎりは三角形というより丸に近く、ラップを外すと海苔が指先へ貼りついたが、歩き回ったあとの塩味は格別だった。みるくは赤い和傘の影へ腰を下ろし、麦茶を一口飲んでから、誰も座っていない向かいの席へ扇を向けた。
「織姫様だって、おなかはすきます。梅干しが端に寄っていても、味がよければ合格です!」
食事のあとは、竹林の奥に作った七夕飾りを見に行った。笹の葉がかさかさ鳴り、紫や黄色の短冊が揺れるたび、木漏れ日も足元で細かく動いた。設置したときには笹が大きすぎると思ったが、濃い緑になじんだ今は、昔からそこに生えていたように見える。みるくは短冊を一枚取り出して願いを書こうとしたものの、麦茶の雫が袖から落ち、最初の一枚に丸い染みを作った。
「あらら。でも、これも今日の思い出ね。捨てないで、そのまま飾りましょう」
短冊には「今日もゲームを楽しいと思える日が続きますように」と書いた。もう一枚には、大切な友達が元気に過ごせるよう願い、星空からよく見える高い枝へ結んだ。一人で庭具を置き、一人で食べ、一人で写真を撮る七夕だったが、マイタウンには、みるくが選んだ色と光と楽しい寄り道が詰まっている。最後に巨大な吹き流しの間へ立つと、織姫様の白い飾りが夏風を受け、大きな蝶の羽のように揺れた。
「彦星様がいなくても、今夜の織姫はご機嫌です。ここは私が作った、世界に一つだけの七夕まつりだからね!」

やっぱり独りぼっちは寂しいw

「灯籠流しには、まだ少し早いのかな。
じゃあ今夜は、織姫様の足元を照らしてもらいましょう」