夏の恋は嵐のごとく
ウェディのみるくは、ジュレットの浜辺に立ち、夜の海をぼんやり眺めていた。白い髪には潮風がまとわりつき、黒い水着の肩には打ち上げ花火の緑色の光が落ちている。屋台で買ったイカ焼きは紙皿の上ですっかり冷めていたが、ひと口かじるたび、あの嵐の夜に避難所で分けてもらった温かい魚のスープを思い出した。
「名前くらい、聞いておけばよかったな」
三日前、ジュレー島を襲った嵐は、立っていられないほど強かった。みるくは濡れた黒いワンピースの裾を絞りながら避難所へ飛び込み、そこで青い外套を着た人間の男性と出会った。彼は震えるみるくへ毛布を渡し、自分のパンを半分に割って差し出してくれた。
「食べないと、明日の朝まで持たないぞ」
「あなたの分が減っちゃうよ」
「平気だ。俺は非常食の干し肉も持っている。ただし、岩みたいに硬い」
男性が干し肉へかじりついて顔をしかめたので、みるくは思わず吹き出した。その直後、避難所の扉が激しく鳴り、外から助けを求める子どもの声が聞こえた。二人は顔を見合わせると、縄を腰へ結び、雨の中へ飛び出した。
「私が先に行く。ウェディは水に強いから」
「だめだ、一人では行かせない。君が流されたら、俺が後悔する」
二人は崩れかけた桟橋の下から、迷子のプクリポを助け出した。避難所へ戻ったとき、みるくの足には切り傷があり、男性は自分の青い外套を裂いて包帯を作ってくれた。夜明け前、疲れて眠ったみるくが目を覚ますと、彼も外套も消えており、床には銀色の貝殻だけが残っていた。
花火が赤く開いた瞬間、背後から懐かしい干し肉の匂いがした。振り向くと、あの男性が青い外套を肩へ掛け、焼きとうもろこしを二本持って立っていた。みるくの指から冷めたイカ焼きが落ちそうになり、男性は慌てて紙皿を受け止めた。
「やっと見つけた。君、避難所で名前を聞く前に寝たから」
「あなたこそ、黙っていなくなったでしょう」
「薬草を買いに行ったんだ。戻ったら君が先に帰っていた」
「じゃあ、お互いさまだね。私はみるく。あなたは?」
「カイトだ。今度は忘れないでくれ」
そのとき沖から黒い雲が迫り、海面に巨大な水竜が姿を現した。祭りの客が逃げ惑うなか、みるくは双剣を抜き、カイトは焼きとうもろこしを屋台の老婆へ預けて大盾を構えた。雷鳴に負けない声で、彼はみるくへ叫んだ。
「嵐の日の続きだ。俺が守るから、君が斬れ!」
「勝ったら、とうもろこしを半分こしてね!」
「半分じゃない。一本ずつ食べよう。それから次の祭りにも一緒に来てくれ!」
みるくは濡れた砂を蹴り、水竜の背へ飛び乗った。双剣が花火の光を受けて輝き、カイトの盾が振り下ろされた尾を受け止める。夏の恋は嵐のように突然始まり、今度は二人を離すどころか、同じ冒険へ走らせていた。