あなどるなかれ耐性装備! みるく、強ボスの洗礼を受ける
夕暮れのヴェリナードを出たみるくは、淡い水色のドレスに身を包み、背中の羽を小さく揺らしながら仲間たちと強戦士の書を開いた。今日の目的はいつもの盗み金策で、みるくの頭の中には「短時間で倒して、宝箱を開けて、また次へ」という気楽な予定しかなかった。隣では紫色の毛並みをした仲間モンスターが尻尾を振り、みるくは道具袋から小さなチョコパンを取り出して一口かじったところだった。
「140レベルのパーティーだよ? 魔女グレイツェル強くらい、耐性なくても楽勝でしょ!」
誰かが笑い、みるくも「そうそう」と頷いたが、その直後に戦場へ飛び込んだ瞬間、空気が変わった。甘い香りのする魔女の舞踏会で敵が動き始め、みるくが盗賊らしく盗みを狙って近づいた途端、画面いっぱいに踊り狂う仲間の姿が見えた。自分のキャラクターまで腰を振り始め、みるくは思わず椅子から身を乗り出した。
「ちょっと待って! 私まで踊ってるんだけど!」
笑っている場合ではなかった。お供の攻撃で仲間が倒れ、さらに魅了まで飛んできて、さっきまで余裕だったパーティーが一気に崩れ始めると、みるくは慌てて回復を呼びかけた。しかも魔法が飛んできた瞬間、白いドレス姿のみるくのHPがごっそり削られ、画面の赤い数字を見た指がぴたりと止まった。
「うそ、魔法まで痛い! 誰か助けてー!」
なんとか立て直して勝利したものの、戦闘が終わったころには、みるくの机に置いていた冷たい麦茶までぬるくなっていた。袋の中には食べかけのチョコパンが残り、仲間たちは何事もなかったように次の強戦士へ向かおうとしている。みるくは装備画面を開き、即死、踊り、呪文耐性という文字をじっと見つめた。
「……耐性って、ちゃんと大事なんだね」
その後の試練でも、災厄でも、みるくは同じ失敗を繰り返さなかった。新しい装備を確認し、必要な耐性をそろえてから出発すると、さっきまで暴れていた敵の攻撃が嘘のように落ち着いて見える。夕食に食べた焼き魚の匂いが部屋に残る中、みるくは笑いながらキーボードを叩いた。
「レベルだけじゃ勝てない! 次からは耐性をなめないぞー!」
今日のみるくの冒険日誌には、大きく一行だけ書かれた。
**『強敵を倒す前に、まず自分の装備を見よ!』**