新しい友との語らいが唯一の癒し?
朝、みるくはいつもの白いフリルのドレスに着替え、机の上に置いた討伐依頼の紙を眺めていた。毎日欠かさず日替わり討伐をこなしているのに、報酬として受け取ったゴールドを数えると、欲しかった装備の値段には遠く届かない。焼いたトーストに蜂蜜を塗りながらバザーを開いてみても、欲しい装備は今日も高いままで、みるくはパンをかじる手を止めてため息をついた。
「日替わり討伐を毎日やってるのに、一か所も買えないって……これ、リアルより厳しい極貧生活なんじゃないの?」
昼になると、みるくは盗み金策へ向かった。仲間のサポートさんたちは、こちらが少しでも稼げるように課金までしてドロップ率を上げてくれているというのに、倒した敵から出てくるレアドロップは八個、九個と増えていくばかりで、肝心の高く売れる品はなかなか落ちない。乾いた風に砂ぼこりが混じり、長時間走り回ったみるくのブーツには細かな砂が入り込んでいた。
「レアドロ八個! 九個! ……で、売れるものはどこなのよー!」
午後はきらきら拾いへ出かけ、拾った素材を最安値でバザーに出した。それでも画面を何度確認しても売れ残りの表示が消えず、夕方になっても同じ品が残っているので、みるくは頬杖をついて画面を眺めた。部屋には昼に食べたおにぎりの包み紙が残っていて、冷めたお茶の匂いが机の周りに漂っている。
「安くしてるのに売れないなら、もう支出を減らすしかないよね。装備も買わない、無駄遣いもしない……」
そのとき、チャット欄に新しい友から声が届いた。みるくが「今日も全然稼げなかったよ」と返すと、相手からすぐに「こっちも同じだよ」と返事が来て、みるくは思わず笑った。効率のいい金策の話をしたり、昨日拾った変なアイテムを見せ合ったりしているうちに、重かった肩が少しずつ下がっていく。
「人が少なくなってるから、私は頑張って経済を回したいんだけどなあ」
「無理しなくていいよ。今日は一緒に遊ぼう」
「……うん。それならできる!」
夜、みるくは売れ残った素材を眺めながら、小さな焼き菓子を一つ口に入れた。甘い香りが広がると、昼間ずっと動かしていた指もようやく止まり、隣では新しい友とのチャットが続いている。ゴールドは増えなかったけれど、今日は一人で画面を見つめて終わる夜ではなかった。