森のこびとの家具庭具、夏の終わりのわくわく冒険
みるくは、届いたばかりの「森のこびとの家具庭具セット」を前にして、しばらくその場から動けなかった。画面に並んだ小さな家具や庭具を眺めていると、胸の奥がくすぐったくなるようで、思わずマウスを握る手にも力が入った。けれど、マイタウンの庭を見渡してみれば、海をテーマにした庭具がぎっしり並んでいて、新しい家具を置く場所などどこにもない。みるくは冷蔵庫から麦茶を取り出して一口飲み、椅子の背にもたれながら小さくつぶやいた。
「うーん……買ったのに、置けないでしゅ!」
庭へ戻ると、青い海を思わせる庭具や砂浜をイメージした飾りが、夏の日差しを受けているように見えた。どれも気に入っているから、今すぐ片づける気にはなれないし、せっかく買った森のこびとたちを無理やり隙間へ押し込むのも違う気がする。みるくは庭を右へ行ったり左へ行ったりしながら、頭の中で家具を置く場所を何度も組み替えた。
「ここじゃないでしゅね……こっちも無理でしゅ……あっ、でも、この木を動かしたら……」
しかし、試しに一つ移動してみても、今度は別の庭具が邪魔になる。みるくは「あーっ」と声を上げ、いったん椅子に座った。机の上には食べかけの塩せんべいが袋ごと置いてあり、指先についた塩をティッシュで拭きながら、みるくはふと暦を思い出した。もうすぐ処暑で、夏の暑さが少しずつ落ち着いていく頃だ。
「そうでしゅ。夏が終わったら、海岸の庭具をお片づけすればいいんでしゅ!」
その瞬間、みるくの中で庭の景色が一気に変わった。海岸の庭具を少しずつ撤去して、その場所に森の木々を置き、こびとの小さな家を並べて、木製の家具を配置する。想像するだけで、潮の香りがする夏の庭から、土と葉っぱの匂いがしそうな森の庭へ変わっていく気がした。
「こびとさんのお家は、ここでしゅね。きのこは……こっち! あっ、ベンチも置きたいでしゅ!」
みるくは嬉しくなって、まだ何も変わっていない庭を何度も眺めた。今は海の庭だけれど、あと少し待てば森へ模様替えできる。そのためなら、買ったばかりの家具庭具を倉庫で大切に眠らせておく時間さえ、楽しみに変わってくる。
「処暑までのお預けでしゅか……でも、楽しみは後に取っておくほうがいいでしゅ!」
窓の外では、夜の風が少しだけ涼しくなっていた。みるくは最後にもう一度、森のこびとの家具庭具セットを確認すると、にこにこしながらパソコンの画面を閉じた。まだ置けないからこそ、これから始まる庭づくりが楽しみで仕方がない。
「待っててくだしゃいね、こびとさん。夏が終わったら、森を作るでしゅよ!」
みるくの夏の庭は、もうすぐ次の季節へ向かって動き始めようとしていた。