日曜日の午後、みるくとキンキンの一番搾り
日曜日の午後、みるくは家族と一緒にテーブルを囲み、DQ10の冒険日誌を眺めていた。窓の外では蝉が朝からずっと鳴き続けていて、開けた窓からむっとする夏の熱気が入り込み、扇風機の風では追いつかないくらい部屋が暑い。みるくは白いTシャツに薄い青色のスカートを着て、首にかけた小さなタオルで額の汗を拭きながら、冷蔵庫から一番搾りの缶を取り出した。
「今日はちょっと贅沢しちゃおうかな」
「お昼から?」
「日曜日のお昼だからいいの!」
家族が笑う横で、みるくは缶を冷凍庫へ入れた。タイマーを三分にセットすると、テーブルへ戻って冒険日誌を開いたが、画面を見ていても頭の片隅では冷凍庫の中のビールのことが気になって仕方がない。昨日の冒険の写真を見ながらも、みるくは何度も時計を確認し、ついには家族にまで笑われてしまった。
「まだ一分しか経ってないよ」
「分かってるよ!」
「さっきから三回時計見てるけど」
「だって、キンキンにしたいんだもん」
「そんなに楽しみなの?」
「そりゃそうでしょ!」
そのとき、台所から香ばしい匂いが漂ってきた。家族が焼いてくれた手羽先は、皮がこんがりきつね色になっていて、しょうゆとにんにくの甘辛い香りが部屋いっぱいに広がり、みるくのお腹が小さく鳴った。テーブルには手羽先の皿のほか、食べかけの枝豆と、朝に洗ったまま畳んでいない洗濯物まで椅子の背にかかっていて、いつもの休日らしい雑然とした空気が漂っていた。
「手羽先、一本食べていい?」
「ビールが出てくるまで待てば?」
「それが一番いい!」
やがて三分が経ち、みるくは冷凍庫を開けた。取り出した缶はキンキンに冷えて表面が白く曇り、細かな水滴が指先へ伝わってきたので、みるくは思わず「冷たっ」と声を上げながら缶を両手で持った。プシュッという音とともにふわっと泡が立ち、はじけるホップの香りが鼻へ抜けた瞬間、みるくは嬉しそうに目を細めた。
「いただきます!」
冷たい一番搾りを口に含むと、炭酸が舌の上ではじけ、ほどよい苦みのあとからホップのさわやかな香りが広がった。暑さで火照っていた体に冷たいものがすっと入ってくる感覚が心地よく、みるくは缶をテーブルへ置くと、肩の力を抜いて大きく息を吐いた。窓の外では蝉が鳴き、冷たい缶から落ちた水滴がテーブルの上で小さな丸い跡を作っている。
「ああ、日本の夏、しあわせ~♡」
「そんなに?」
「そんなに!」
そこへ焼きたての手羽先が運ばれてきた。みるくは一番大きな一本を取り、熱さを確かめながら少しずつかじったが、皮がパリッと割れた瞬間、肉汁と甘辛いタレが口いっぱいに広がった。香ばしい鶏肉を噛みしめてからビールを一口飲むと、今度は冷たい炭酸が喉を通り、思わず声が出た。
「ぷっはー、やっぱこれだね!」
「おじさんみたい」
「いいの! おいしいんだから!」
「手羽先、もう一本いる?」
「いる!」
みるくは笑いながら二本目の手羽先を受け取り、骨の周りまできれいに食べた。DQ10の冒険日誌には昨日の冒険の写真が並び、家族が「あ、この写真いいね」と言えば、みるくも画面をのぞき込んで「でしょ?」と答える。特別な旅行に出かけなくても、こうして同じ画面を見ながら、おいしいものを「おいしいね」と言って食べられる午後があるだけで、みるくは十分に満たされた気持ちになった。
「ねえ、次の冒険はどこに行く?」
「食べ終わってから考えようよ」
「じゃあ、もう一個手羽先!」
「冒険より先に食欲じゃん」
「だって、これおいしいんだもん!」
蝉の声と家族の笑い声が混ざる部屋で、みるくは冷たい一番搾りをもう一口飲んだ。テーブルには手羽先の骨が並び、冷凍庫で三分しっかり冷やした缶には、まだ細かな水滴が残っている。みるくは冒険日誌をめくりながら、今年の夏もこんなふうに笑って過ごせたらいいなと思い、最後の一口までゆっくり味わった。