いいねゼロでも、彼だけは見ていました
みるくは新しく買った白と桃色のドレスに着替え、花でいっぱいの部屋で何度も姿勢を変えた。袖には大きなリボンがつき、白い髪には薔薇と蝶の髪飾りを飾っている。虹と花びらが見える場所で写真を撮り、冒険日誌へ載せたあと、冷めたミルクティーを飲みながら画面を更新した。
「おかしいです。こんなに可愛いのに、いいねが一つもつきません」
そこへ討伐帰りのレオンが入り、泥のついた外套を椅子へ掛けた。机には食べかけの苺サンドと散らかった髪飾りがあり、床には撮影場所を決めるため動かした椅子の跡まで残っている。レオンは何も言わずにみるくを上から下まで眺めたので、彼女は大きなリボンを両手で直した。
「どうですか。新しいお洋服ですよ」
「知っている」
「まだ何も説明していませんけど」
「さっきから扉の外で、二十七枚撮り直す音を聞いていた」
みるくは口を尖らせ、また冒険日誌を更新したが、いいねの数字は動かなかった。服の色が薄すぎるのか、髪飾りが大きすぎるのか、それとも撮る角度が悪いのかと考え、鏡の前で右を向いたり左を向いたりした。レオンは苺サンドを一つ取ると、彼女の動きを見ながらゆっくり食べた。
「レオンも、似合わないと思っているのでしょう」
「誰がそんなことを言った?」
「だって、いいねを押してくれません」
「俺は冒険日誌の見方が分からない」
「まず、そこからですか!」
みるくは彼の隣へ座り、端末を持つ指へ自分の指を重ねて、いいねの場所を教えた。ところがレオンは押す直前で手を止め、みるくの顔と写真を交互に見比べた。画面の中のみるくも可愛かったが、目の前で頬を膨らませるみるくのほうが、花びらより目立っていた。
「写真より、今の君に押したい」
「私にはボタンがありません」
「では、代わりにこれでいいか?」
レオンはみるくの髪についた桃色の花びらを取り、そのまま額へ軽く口づけた。みるくは両手を胸元で握り、青い瞳を丸くしたまま動かなくなった。少しして冒険日誌に最初のいいねがついたが、彼女はもう画面を見ていなかった。
「レオン、もう一度お願いします」
「いいねをか?」
「そちらではありません。分かっているくせに聞かないでください」