花束五十四種類、夢のアストルティアへ
みるくは急に、自宅を花束で埋め尽くしてみたくなった。桃色のフリルワンピースを着て、花に囲まれた椅子へ座り、照れかわのポーズを取ってみる。テーブルには飲みかけのカルピスソーダと塩せんべいがあり、部屋には朝のトーストの匂いが残っていた。
「花束って、何種類あるんだろう?」
花束交換屋ププリンの一覧を数えると、全部で五十四種類あった。みるくは三十七番目で数を忘れ、塩せんべいをかじって最初から数え直した。けれど、すぐに旅人バザーへ走るのはやめて、屋根裏収納と預かり所を調べることにした。
「今まで育ててきたお花を、先に整理しなくちゃね」
収納箱からは、ピンクローズやブルーリリィなど、使わずに残していた花が次々に出てきた。畑へ水をまき、毎朝つぼみを確かめて育てた花なので、一輪も無駄にはしたくない。みるくはパンくずの残った机へ帳面を広げ、種類と個数を書き始めた。
「ピンクローズ十七個、ブルーリリィ二十二個……あれ、こっちの箱にも入ってる!」
すでに交換して持っている花束を並べると、二十一種類もあった。花言葉が「自由」のシルバー、「安らぎ」のラベンダー、「冒険の旅」のエメラルドなど、色とりどりの花束が桃色の家具を囲んでいく。残りは三十三種類だと分かり、みるくはカルピスソーダを飲みながら足りない花だけを帳面に記した。
「全部買わなくても、持っているお花を合わせればいいんだ。これなら課金も使わないよ」
「ゴールドの使いすぎには気をつけてね」
「一日に一束ずつなら大丈夫!」
整理した花の中には、ちょうど三十個そろったものもあった。交換できたラベンダーの花束を飾ると、淡い紫の花から雨上がりの庭のような香りが漂った。みるくは二十二種類になった花束を背に、もう一度照れかわのポーズを取った。
「今までのわたし、ちゃんと育ててくれてありがとう。五十四種類を目指して、夢のアストルティアへ出発!」
空いている場所は、残り三十二種類の予約席である。五十四種類がそろう日は、まだずっと先でいい。昔育てた花を一輪ずつ見つけながら進めば、毎日の楽しみも長く続くのだから。