花束三十二種類、ここでいったん待った!
みるくは桃色のフリルワンピースのまま、三十二種類の花束に囲まれて帳面を開いた。机には冷めたミルクティーと半分残ったあんパンがあり、床には数え終えた花の包み紙が散らばっている。今日購入した花は合計四十一万二百十三ゴールドで、思ったより安く花束を増やせたものの、残っている二十二種類の相場を見ると、指がぴたりと止まった。
「これから作る花束、高額なものばかりじゃない?」
パールスズランは二個で八万ゴールド、クリームカメリアも一輪ずつ買うだけで財布へ小さな穴を開けてくる。みるくは香ばしいあんパンの端をかじり、残り二十二種類に必要な花の値段を何度も見直した。全部そろえようとすれば、一千万ゴールド近くかかる可能性まである。
「花束なのに、家が買えそうなんですけど!」
「高級住宅に生えている花なのかもね」
「摘んだら怒られるやつだ!」
しかも、何度も確認したはずなのに、同じ花束を二つ作った種類もあった。ジャングルリップは購入した五十四個に、以前から持っていたらしい六個を足して、ぴったり六十個になったのである。二束目はひまりへ渡したため無駄にはならず、緑色の花束を抱えたひまりは得意そうに胸を張った。
「わたしへの贈り物だね!」
「整理整頓に失敗した結果とは言わないでね」
「花言葉は『激情』だよ。失敗を認めない勢いにぴったり!」
「ひまり、急に言葉が鋭くない?」
みるくは残り二十二種類の名前を書いた帳面を閉じ、ミルクティーを一口飲んだ。すっかりぬるくなっていたが、甘い香りを吸い込むと、今すぐ買わなくても花束は逃げないと思えた。九千四百五十時間五十分も冒険してきたのだから、待つことだって立派な作戦である。
「現在三十二種類。ここでいったん様子を見ます!」
「諦めたの?」
「違います。戦略的お買い物休憩です!」
空いている場所は、残り二十二種類の予約席になった。みるくは花束を背に照れかわのポーズを取り、ひまりも隣で激情の花束を掲げる。諦めたら試合終了だが、一千万ゴールドを勢いで使ったら財布が終了するので、二人は今日の冒険を笑って終えた。