ストロベリーの誘惑と五人の討伐隊
ストロベリーの花束を見た瞬間、みるくの指は迷わず購入ボタンへ伸びた。白地に金の刺繍が入ったドレスの袖を机に引っかけながら、ストロベリーガーベラを十本、また十本、最後にもう十本と買い集め、合計二十六万三千六百三十ゴールドを支払った。机の端では、昼に食べたイチゴジャムのトーストが一口だけ残り、甘い香りを漂わせていた。
「三十本そろいました!」
「高かったね」
「これは浪費ではありません。誘惑に正直になっただけです」
「それを普通は浪費って言うんだよ」
三十本のガーベラをストロベリーの花束へ交換すると、淡い桃色の花びらが部屋いっぱいに輝いた。星を散らしたような紫色のカーテンの前に置けば、黄色い包装紙と赤いリボンまできらきら光り、みるくは花の周りを三回も歩いて眺めた。しかし、空になった財布を開くと、花の甘い匂いまで急に高級品の匂いに思えてきた。
「きれいだけど、所持金が軽くなりました」
「花束は重そうなのにね」
「これは笑っている場合ではありません」
「じゃあ、日替わり討伐へ行こう。五キャラ全部で」
「五人とも働かせるのですか!」
「花を買ったのは誰かな?」
こうして、みるくを先頭にした五人の討伐隊がフル稼働することになった。赤い帽子の子、青い鎧の子、緑のローブの子、動きやすい革の服を着た子、そして裾の長いドレスのまま戦うみるくが、次々と討伐依頼を受けて荒野へ飛び出した。乾いた風が頬を打ち、魔物の足音が土を揺らすなか、みるくの鞄では夕食用のおにぎりが激しく転がっていた。
「一人目、出発!」
「二人目も受注しました!」
「三人目、おにぎりがつぶれた!」
「四人目、魔物より先にお茶を飲んでいます!」
「五人目のみるく、ドレスの裾を踏みました!」
「最後の報告だけいりません!」
一人で同じ討伐を五回するのは簡単だと思っていたが、途中から誰が何匹倒したのか分からなくなった。みるくは帳面に正の字を書いて数えたものの、手袋についた泥で紙が汚れ、三人目の欄にはなぜか「梅おにぎり」と書かれていた。それでも五人は走り、剣を振り、呪文を放ち、最後の一匹が倒れると、夕焼けの荒野でいっせいに腕を上げた。
「討伐完了!」
「これで約二十万ゴールド!」
「おいしい!」
「つぶれたおにぎりも食べる?」
「そちらのおいしいではありません!」
町へ帰ったみるくは報酬を受け取り、ずしりと重くなった財布を両手で持ち上げた。五キャラの日替わり討伐だけで二十万ゴールドになるなら、ストロベリーガーベラに使った分も、もう怖くはない。部屋には花束の甘い香りと温め直した味噌汁の湯気が混じり、洗濯物の靴下だけが華やかな景色に似合わず揺れていた。
「明日も五人で討伐するよ」
「もちろんです。花束を増やせますから!」
「稼ぐ目的が、もう増えてるね」
「ストロベリーの花束には『誘惑』という意味があるのです」
「ちゃんと誘惑されてるじゃない」
「はい。しかも、とても楽しいです!」