三十七番目は、ついてるサンゴールド
みるくが旅人バザーでサンゴールドスズランを見つけたのは、朝の討伐へ出かける直前だった。黒と橙色の短いドレスに網模様のタイツを合わせ、焼きたてのバタートーストを片手に値段を確かめると、レアな花なのに十本で八千五百ゴールドと表示されている。みるくはトーストを皿へ戻し、粉砂糖のついた指で何度も画面を指した。
「安い! めちゃくちゃ安いです!」
「落ち着いて。ゼロを一つ見落としてない?」
「八千五百です。八万五千ではありません!」
「トーストの粉を画面につけないでね」
「今は粉より花です!」
十本の束は三つとも同じ値段で、三十本を買っても合計二万五千五百ゴールドだった。昨日のクレイガーベラ三十本には二十万九千三百七十九ゴールドかかったので、みるくはあまりの違いに椅子から立ったり座ったりし、最後には財布を開いて中身まで確かめた。窓辺の洗濯物から石けんの匂いが漂うなか、購入済みの花を数える指が忙しく動いた。
「三十本、ちゃんとあります!」
「レアなのに、その値段はついてるね」
「今日は幸運が両肩に乗っています!」
「肩が重そうだけど大丈夫?」
「幸運なら十人くらい乗せられます!」
みるくは花を抱えて交換所へ走ったが、途中の酒場から焼いた肉と香辛料の匂いが流れてきた。サンゴールドの花束が持つ意味は「酒場の友」であり、これは寄り道をしなさいという花からのお告げに違いないと、みるくは都合よく考えた。討伐へ向かう仲間は入口で腕を組んだが、みるくのおなかが先に大きな返事をした。
「花束にする前に乾杯しましょう!」
「まだ朝だよ」
「ではミルクで乾杯します」
「討伐は?」
「魔物にも朝食を食べる時間が必要です!」
「自分が食べたいだけでしょ」
温かいミルクと串焼きを平らげたみるくは、今度こそ交換所へ向かった。三十本のスズランは、太陽を小さな鈴へ閉じ込めたような黄金色の花束になり、赤いリボンの上でまぶしく輝いた。花の甘い匂いを吸い込んだみるくは、これで三十七番目、五十四種類をそろえるまで残り十七種類だと帳面へ大きく書いた。
「あと十七種類です!」
「安い花ばかり残っているといいね」
「今日の運なら全部八千五百ゴールドかもしれません」
「それは欲張りすぎ」
「幸運は遠慮したら逃げるのです!」
夜になり、みるくは紫色の枝が広がる部屋へサンゴールドの花束を飾った。黄金色の鈴のような花々が木の壁を明るく照らし、日替わり討伐で汚れた靴と、酒場から持ち帰った紙袋まで立派な戦利品に見えた。レアな花を安く買えた嬉しさ、酒場で笑った楽しさ、三十七番目を迎えた幸せをまとめて抱え、みるくは花束の前で胸を張った。
「今日は本当についていました」
「明日も酒場の友と乾杯する?」
「もちろんです。今度は討伐を終えてから!」
「少し成長したね」
「冒険もコレクションも、腹ごしらえが大切です!」