四十番目のベージュの花束
朝の光が木目の床へ差し込み、部屋いっぱいに並べた花束の赤いリボンをきらきらと輝かせていた。銀色の髪を肩で切りそろえたひまりは、白と灰色のロングドレスの裾を整え、これまで一つずつ集めてきた花束の前に立った。黄色い花器を重ねた花束の棚はひまりの背よりも高く、淡い花びらの間からのぞく緑の葉には、朝露のような光がちらちらと弾けていた。机には飲みかけの麦茶と、昨日買ったあんパンの残りが置かれ、皿の上には黒ごまが三粒こぼれていた。
「三十九種類まで集めたんだね。今日、四十番目をここへ並べよう」
今回作るのは、ベージュの花束だった。交換にはベージュカメリアが三十輪必要だったが、旅人バザーに三十輪まとめた出品は見当たらなかった。ひまりは三輪、二輪、五輪、四輪と、出品されている花を少しずつ買い、個数と値段を使いかけの帳面へ書き込んだ。鉛筆の先は丸くなっており、ときどき数字が太くつぶれたので、小さな鉛筆削りを探して散らかった引き出しを二段も開けることになった。
「まず十輪。まだ三分の一だけど、ちゃんと近づいてるよ」
四輪を足し、二輪を二回買うと、残りは十二輪になった。そのあとは一輪や二輪の小さな出品が続き、ひまりは画面を動かすたびに指を折って数えた。窓の外では洗濯物のハンガーが風に揺れ、かたん、かたんと物干しざおに当たっていた。少しお腹が空いたので、冷蔵庫から昨夜のポテトサラダを出し、冷たいきゅうりをしゃりしゃりと噛んでから帳面を見直した。
「二十一、二十二、二十三……うん、合ってる。急がなくても大丈夫」
一輪三百九十ゴールドの出品がいくつも続き、同じ出品者から買った花もあった。それでもひまりはまとめて数えたことにせず、一件購入するたびに帳面へ一本の線を引いた。途中で数が分からなくなりそうになると、薄くなった麦茶を飲み、ドレスの袖口についたパンくずを払ってから最初から確認した。最後に見つけた一輪は百八十ゴールドで、購入した瞬間、帳面には三十本目の線が並んだ。
「そろった! ベージュカメリア、ちょうど三十輪だよ」
三十輪に使った金額は、合計一万二千六百四十ゴールドだった。交換所で花を渡すと、淡いベージュカメリアを白い包みでまとめ、黄色い花器に赤いリボンを飾った花束が完成した。ひまりはそれを部屋へ持ち帰り、三十九種類の花束が並ぶ場所に置いた。柔らかなベージュは焼きたてのパンや温かいミルクティーを思わせ、周りの花の色を邪魔せず、空いていた場所へ昔からあったようになじんだ。
「これで四十種類目。五十四種類まで、あと十四種類だね」
数字だけを見れば、まだ十四種類も残っていた。けれど、ひまりの目の前には、すでに集め終えた四十種類の花束が積み上がっている。一日で全部そろえられなくても、花を数え、値段を確かめ、途中で休みながら続けた結果は、赤いリボンと淡い花びらになって消えずに残っていた。ひまりは背筋を伸ばし、白いドレスの胸元へ片手を置いた。
「私、まだ十四種類しか集めていないんじゃない。もう四十種類も集めたんだ」
その言葉を口にすると、胸の中にあった空白が、四十種類分の色でゆっくり満たされていった。ひまりは花束の前を歩き、色や形の違いを一つずつ確かめながら、ここまで付き合ってくれた花々へ小さく頭を下げた。甘いあんパンの匂い、木の床の温かさ、花の周囲で弾ける光まで、今朝はすべてが自分を迎えてくれているようだった。
「美しいお花たち、ありがとう。四十一番目を迎える場所も、ちゃんと空けておくからね」
ひまりは冷めた麦茶を飲み干し、空になった皿を台所へ運んだ。戻ってから帳面の「四十」の横へ大きな丸をつけると、鉛筆の黒い粉が指先へ少し付いた。五十四種類すべてがそろう日はまだ先だが、今日の自分には四十番目まで続けてきた手がある。ひまりは完成したベージュの花束をもう一度見上げ、次のページを静かに開いた。
「今日はここまで。また明日、一つずつ集めよう」