四十三番目の涼しい花屋さん
みるくは白銀のドレスに袖を通し、胸元の細かな飾りを鏡の前で直した。白い長靴まで履くと、灰色がかった青い花のそばに立つために仕立てた服のように見える。机には朝のトーストから落ちたパンくずと、半分残したイチゴジャムがあり、冷めた紅茶には薄い膜が張っていた。みるくは帳面の四十三番目を指で押さえ、購入した花の数を確かめた。
「グレーブルーマリーは十本で五万七千ゴールド、次の十本が五万六千九百ゴールド、最後の十本が五万五千ゴールドです」三つの値段を足すと、三十本で十六万八千九百ゴールドになった。みるくは数字の横に大きく丸を書き、インクで汚れた小指をハンカチで拭いた。
「昨日から花を買いすぎじゃない?」
「四十三番目まで来たんです。ここでやめたら、残りの十一種類が気になります」
花交換屋に三十本を渡すと、店員は青みを帯びた花を両手で抱え、傷んだ葉がないか一本ずつ調べた。グレーブルーマリーは細かな花が集まった姿をしており、みるくには春の花屋で見たヒヤシンスのように見えた。実際には画面の中から匂いは届かないはずなのに、鼻先を近づけると、冷たい水と青い葉を混ぜたような涼やかな香りが漂ってくる気がした。
「きれいですね。ずっと花屋さんで働いてみたいと思っていました」
「見た目はきれいですが、仕事は冷えますよ」
「お花を長持ちさせるには、涼しくしないといけないから?」
「ええ。冬でも冷たい水を使いますし、水を張った重いバケツも運びます。指先も腰も大変です」
完成したグレーブルーの花束は、黄色い包み紙と赤いリボンに包まれていた。青灰色の花びらに黄色と赤が加わると、静かな色なのに売り場ではよく目立つ。みるくは花束を受け取りながら、冷えた手で茎を切る店員の姿を思い浮かべた。昼食用に持ってきた鮭のおにぎりは鞄の底で少し潰れていたが、温かい味噌汁も用意すればよかったと思った。
「この花の花言葉は『勇敢』です」
「冷たい水に毎日触って、それでも花をきれいに並べる人に似合う言葉ですね」
「では、あなたにも似合いますよ。五十四種類の花束を集めているのでしょう?」
「買い物をしているだけなので、私はまだ見習いです」
家へ戻ったみるくは、紫色の枝が天井近くまで広がる部屋に花束を並べた。左にはこがね色、中央にはグレーブルー、右には珊瑚色の花が置かれ、店を開けるほど華やかな眺めになった。青い花の前に立つと、白銀のドレスへ花の色が淡く映り、滝から流れる水音までいつもより冷たく聞こえる。みるくは両腕をさすり、台所へ温かいミルクを作りに行った。
「いらっしゃいませ。四十三番目の花束はいかがですか」
「花言葉は何ですか?」
「勇敢です。でも、花を眺めて体が冷えたら、無理をしないで温かいものを飲んでください」
湯気の立つカップを両手で包むと、指先へじわじわと熱が戻ってきた。花屋さんはきれいな花に囲まれているが、その景色を守るために冷たい水と重い鉢を扱っている。みるくは帳面の四十三番目に「十六万八千九百ゴールド」と書き、その下へ小さく「働く人も勇敢」と付け加えた。